研究課題/領域番号 |
26820237
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
石山 央樹 中部大学, 工学部, 講師 (90634436)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 木質構造 / 耐久性 / 錆 / 木材乾燥 |
研究実績の概要 |
本研究は、木材の乾燥方法、温湿度環境、釘の表面処理や形状等をコントロールすることによって釘の発錆量と錆の進行速度をコントロールし、釘接合部のせん断耐力を高い水準で保つ技術を開発することを目的としている。この技術が可能になれば、釘の表面処理が不要となるため、初期建設コストを抑えるだけでなく、維持管理費用を抑える効果が期待でき、地球温暖化に貢献することが見込まれる。また、供用期間が1000年オーダーである伝統的木造建築物では、鉄の腐食がネックとなるため、一般的には鉄素材の併用が難しいが、本研究により鉄の腐食進行を抑える手法が開発されれば、伝統的木造建築物等にも鉄素材の併用が可能となる。さらに、本研究で得られる木材や環境と諸条件と腐食速度との関係情報は、木造建築物の耐久性設計手法の重要な一部を担う者となり得る。 このような目的のため、まず、木材の乾燥処理条件およびその後の静置温湿度条件が打ち込まれた釘の発錆状況におよぼす影響を実験的に確認した。乾燥処理条件は高温乾燥、中温乾燥、低温乾燥、天然乾燥とした。これらの木材にN50釘を打ち込み、各条件下に静置し、一定期間経過後に釘のせん断実験を実施するとともに、釘の除錆を行い、腐食減量を確認した。静置条件は常温常湿(室内環境)、高温高湿(40℃90%程度)、常温高湿(地下室環境)とした。常温常湿および常温高湿環境はなりゆきとした。高温高湿環境は飽和塩水溶液を入れたコンテナを恒温器に静置することとした。木材はスギ心材およびスギ辺材とし、同一材から各乾燥条件、各静置条件に供することで、個体差を極力なくした。 平成26年度は常温常湿環境で4週間経過後の試験体について、釘のせん断耐力と腐食減量を確認した。その結果、0.5~1.5%程度と腐食減量は未だわずかであり、乾燥処理条件との相関は特に見られなかった。せん断耐力についても、乾燥処理条件との相関は特に見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木材の乾燥処理条件およびその後の静置温湿度条件が打ち込まれた釘の発錆状況におよぼす影響を確認する検証は、当初計画では2年目に実施する予定であったが、発錆が確認できるまでの期間が長期間となることが予測されたため、計画を前倒しして実施した。 高温高湿環境下で発錆促進させた釘の引抜耐力と錆の組成の確認は、発錆するまでの期間が比較的短いことが予測されるため、2年目以降に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、木材の乾燥処理条件およびその後の静置温湿度条件が打ち込まれた釘の発錆状況におよぼす影響を確認する検証の経過観察を引き続き行う。また、高温高湿環境下で促進発錆させた釘の引抜耐力と錆の組成の確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
木材の乾燥処理条件およびその後の静置温湿度条件が打ち込まれた釘の発錆状況におよぼす影響を確認する検証を前倒しで実施し、錆量および錆の組成とせん断耐力との関係を確認する検証は2年目に実施することとした。そのため、各分析機器等の初年度の購入を見送り、2年目に購入することとしたため、次年度使用金額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
量および錆の組成とせん断耐力との関係を確認する検証のための各分析機器および消耗品類の購入に充当する。
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