本研究は、木材の乾燥方法、温湿度環境、釘の表面処理や形状等をコントロールすることによって釘の発錆量と錆の進行速度をコントロールし、釘接合部のせん断耐力を高い水準で保つ技術を開発することを目的としている。この技術が可能になれば、釘の表面処理が不要となるため、初期建設コストを抑えるだけでなく、維持管理費用を抑える効果が期待でき、地球温暖化に貢献することが見込まれる。 このような目的のため、木材の乾燥処理条件およびその後の静置温湿度条件が、打ち込まれた釘の発錆状況に及ぼす影響を実験的に確認した。乾燥処理条件は高温乾燥、中温乾燥、低温乾燥、天然乾燥とした。これらの木材にN50釘を打ち込み、常温常湿、高温高湿(40℃90%RH)、常温高湿の各条件下に静置し、一定期間経過後に釘のせん断実験を実施するとともに、釘の除錆を行い、腐食減量を確認した。木材はスギ心材及びスギ辺材とし、同一材から乾燥条件、各静置条件に供することで、個体差を極力なくした。 まず、木材の乾燥状況と発生する酸の量との関係を確認するため、スギ未乾燥材を高温乾燥し、含水率とpHの経時変化を確認したところ、pHの変化は殆ど見られなかった。次に、釘の発錆状況およびせん断性能の確認を行った。高温高湿環境下で約7か月の暴露を行ったところ、次のことが確認された。心材と辺材とを比べると、乾燥処理条件によらず、釘の発錆は心材に打ち込まれたものよりも辺材に打ち込まれたものの方が著しかった。また、心材、辺材とも、釘の発錆は人工乾燥材に打ち込まれたものよりも天然乾燥材や生材に打ち込まれたものの方が著しかった。人工乾燥材の中では中温乾燥材に打ち込まれたものの発錆が著しかった。釘のせん断性能は釘の重量残存率約95~80%程度で最も高く、それ以上発錆が進行すると徐々に低下する傾向が見られた。
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