研究課題/領域番号 |
26820240
|
研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山本 貴正 豊田工業高等専門学校, 建築学科, 准教授 (70418987)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 繊維混入率 / 圧縮強度 / ヤング係数 / 平均値 / 変動係数 |
研究実績の概要 |
近年、超高層建築物にコンクリート充填鋼管(CFT)柱構造が多く採用されている。これに伴い、CFT柱に使用する鋼管およびコンクリートの超高強度化が要求されている。一方で、充填コンクリートが超高強度化するほど、CFT特有の高靭性が著しく失われてしまう研究成果が得られている。今後、超高強度CFT柱構造をより一般的な構造形式として実用化するためには、充填コンクリートの超高強度化に伴い脆性化するCFT柱の靭性を改善する必要がある。 以上のことから、本研究では、超高強度CFT柱の靭性改善を図るため、従来から多くの研究成果が蓄積されている高靭性の繊維補強コンクリートに着目し、鋼繊維補強コンクリート充填鋼管柱の開発を試みる。そこで、まず、CFT柱構造の強度および靭性を表す指標として、一般に用いられる短柱の圧縮試験を行い、超高強度CFT短柱の耐力-変形関係に及ぼす鋼繊維補強効果について、実験的に研究を遂行する。 研究初年度では、超高強度・靭性を有する鋼繊維補強コンクリートの作製を試みた。なお、実験要因は、コンクリートの強度レベル、繊維の強度レベルおよび繊維混入率(体積比)とし、靭性の目安を、強度レベル36MPa(AIJ-JASS 5:2009が定義している普通コンクリートの設計基準強度の上限値)の圧縮強度到達後の応力度-変位関係の形状と比較し、緩やかであること、作業性・充填性の目安を、圧縮強度の変動係数の10%(AIJ-JASS 5:2009の上限値)、とした。その他に、ヤング係数(応力度-ひずみ度関係の原点と圧縮強度の1/3の応力点を結ぶ直線の勾配)についても検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、超高強度コンクリートのヤング係数、圧縮強度および応力度-ひずみ度関係に及ぼす繊維補強有無の影響とそれら変動係数について実験的に検討した。使用した鋼繊維は、3次元立体波型普通鋼繊維および両端フック付き高張力鋼繊維の2種類である。また、繊維補強コンクリートの結果を踏まえ、鋼繊維補強コンクリート充填鋼管短柱の圧縮試験の予備実験を実施した。なお、研究当初、目標としたコンクリートの作業性、圧縮強度、靭性などが得られなかったため、第229回(平成26年度第2回)日本建築学会東海支部材料施工委員会のイブニングセミナーでこれらのことを報告し、各委員より助言を得た。 コンクリートの実験の結果、1)同一圧縮強度において、ヤング係数は、繊維混入率が高いほど、低下する傾向がある。2) 繊維混入率が高いほど、空気量が低下し、圧縮強度が高くなることがある。3) 圧縮強度到達後の応力度-ひずみ関係に及ぼす高張力鋼繊維の効果は、普通鋼繊維の倍程度である。などの知見を得た。また、a)圧縮強度到達後における応力度-変位関係の形状が、強度レベル36MPaと比較して緩やかとなる、b)圧縮強度の変動係数が10%以下となる、c)見掛密度の変動係数が、無補強コンクリートと同等となる、ことを全て満たす鋼繊維補強コンクリートを作製することができた。 上記a-c)の条件を全て満たす鋼繊維補強コンクリートを充填したCFT短柱の圧縮試験の結果、1)最大圧縮耐力到達後の最小の軸圧縮耐力が、無補強と比較し、著しく高くなること、2)繊維補強を施した角形CFT短柱の耐力-変形関係が、それとほぼ同じ断面を有する無補強円形CFT短柱と相似となる、などの知見を得た。 以上のこのようなことから、研究は概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでのコンクリートの実験およびCFT短柱の予備実験の結果を踏まえ次のように研究を推進する。 CFT短柱の圧縮試験ついて次のことを検討する。1)最大耐力到達後の耐力劣化勾配に及ぼす圧縮強度レベルと繊維混入率の影響、2)鋼管によるコンクリートの拘束効果に及ぼす圧縮強度レベルと繊維混入率の影響、3)コンクリートによる鋼管の局部座屈抑制効果に及ぼす圧縮強度レベルと繊維混入率の影響、なお、二軸ひずみゲージの値と弾塑性理論を用いて、鋼管とコンクリートの負担軸力を算出し、上記について詳細に検討を行なう。 上記の結果を踏まえ、水平力を受ける繊維補強を施した角形CFT柱の平均軸方向ひずみ度が、無補強CFT柱のように進行しないかを検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究成果を、学会論文などに投稿できず、予定していたそれら投稿料、学会年会費を支出できなかったためである。 学会論文などに投稿できなかったのは、現在までの達成度で記述したように、研究当初、目標としたコンクリートの作業性、圧縮強度、靭性などが得られなかったためである。なお、第229回(平成26年度第2回)日本建築学会東海支部材料施工委員会のイブニングセミナーでこれらのことを報告し、各委員より助言を得るなどして、その後、初年度の研究目的をほぼ達した。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究成果を、初年度の内容については、中部セメントコンクリート工学論文集第28号、次年度の内容については日本建築学会東海支部研究報告集第54号、また初年度と次年度の内容をコンクリート工学年次論文集第38号に投稿する予定であり、これらの投稿料に充てる計画である。また、試験体作製に必要な材料の費用に充てる。
|