本研究の目的は,透水・脱水工法を行ったコンクリートについて,これまでに応募者が提案した改良型透水・脱水モデルを拡張し,その中性化を予測するモデルを構築することである。研究初年度は,暴露試験体の暴露期間12年の中性化深さの測定を行い,促進中性化試験と暴露試験から得られた中性化速度係数の関係を明らかにするとともに,中性化速度係数と水セメント比の関係を求めた。その際,EPMAによる面分析も実施した。また,真空脱水処理コンクリートの実大供試体(500mm×500mm×高さ180mm)を作製し,そこから採取したφ50mmコアの密度・圧縮強度試験を行うとともに,促進中性化試験を開始した。研究2年目は,真空脱水処理コンクリートの促進中性化試験を継続するとともに,透水性型枠コンクリートの実大供試体(150mm×300mm×高さ1000mm)を作製し,真空脱水処理コンクリート同様の手順を経て,促進中性化試験を開始した。なお,真空脱水処理コンクリートにおいて,φ50mmコアの密度・圧縮強度試験の結果にバラツキが生じた。これは,水セメント比が極端に大きかったことが原因と考えられるため,水セメント比を変更して追実験を開始した。研究最終年度では,透水性型枠コンクリートの促進中性化試験において,透水型枠面からではなくシール部分から中性化していたため,シール材の変更と密着テープによるシールを併用し,追実験を開始した。また,真空脱水処理および透水性型枠コンクリートから事前に採取しておいた,水セメント比分析用のφ50mmコアを,上層から3mmずつ3層にスライスし,セメント協会法による硬化コンクリートの配合推定に準拠し,調合推定を行った。その結果,水セメント比が中性化速度係数と強い相関関係にあることを明らかにし,より深い位置を含めた水セメント比分布を明らかにすれば予測モデルを構築できる可能性を示した。
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