前年度は人体モデルの基本設計を行い,人体モデルを物理モデルと生理モデルに分割し,さらに,物理モデルを熱回路網モデル(伝熱解析)と循環系モデル(流体解析)に分割して開発を行うこととし,特に循環系モデルの開発を重点的に行った。また,生理量測定実験をおこない,人体生理反応の解明およびモデル検証のためのリファレンスデータを収集した。 上記の成果に基づき,本年度は以下を実施した。 1) 生理量測定実験:前年度に引き続き生理量測定実験を実施した。本年度は姿勢を仰臥位に固定し,18℃から40℃までの5段階の室温条件下で実験を行った。その結果,室温の上昇に伴う血流量の増加や耳内温度の低下に関するデータ,低温環境下における血管収縮による血圧上昇に関するデータなどが得られた。 2) 熱回路網モデルの改良:従来の熱回路網モデルでは生理量測定実験の再現ができないことが明らかになったため,動脈および静脈とその他の組織との間の熱交換に関してモデルの改良を行った。その結果,室温上昇に伴う皮膚温度と耳内温度の変化について,その傾向を再現することができた。 3) 循環系モデルによる生理量測定実験の再現:体温調節反応の一部として生じる循環調節反応を,循環系モデルの動脈末梢部および細動脈の血管抵抗の変化と,静脈のコンプライアンスの変化として表現することで,生理量測定実験の再現を試みた。その結果,実験の血圧・血流量を概ね再現できることを確認した。 4) 物理モデルの連成:熱回路網モデルと循環系モデルの連成シミュレーションが可能なプログラムを開発した。
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