研究実績の概要 |
平成28年度は、日本における風車騒音の評価手法の確立に資する知見を蓄積することを目的として、引き続き、低周波音領域まで再現できる聴感実験システムを用いた主観評価実験によって、主に風車騒音に含まれる低周波音領域の純音成分が及ぼす心理的影響について、純音成分の可聴性およびアノイアンス(うるささ)に着目した実験的検討を行った。その結果、実験室実験による短期暴露による検討ではあるが、騒音の物理的な評価指標と心理的影響の関係を明らかにした。また、風力発電施設から発せられる騒音に関する規制基準の策定に資する科学的知見を蓄積するため、これまでの研究成果を国内外の学会発表等で積極的に公表し、意見交換を行った。本研究期間内には、イギリス等の先進諸外国の研究チームの研究者とも交流を諮ることができ、複数の論文(Inter-noise2016, Wind Turbine Noise2017)に本研究で得られた成果が肯定的に引用されていることからも、本研究で得られた風力発電施設から発せられる低周波音成分を含む騒音に関する心理的影響に関する研究成果は諸外国の研究者からも、概ね、コンセンサスを得ることができていると考える。さらに、これまでの研究成果は「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会(環境省)」の報告書(平成28年11月)で提案された「風車騒音の評価の目安」にも反映されている。ただし、風車騒音の評価において純音成分が検出された際のペナルティの可否については結論に至っておらず、今後の更なる議論が待たれるところである。
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