研究課題/領域番号 |
26820247
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
金田一 清香 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00396300)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エネルギー効率 / ヒートポンプ / 熱源システム / 貯留水 / 未利用エネルギー |
研究実績の概要 |
深さ5m程度の調整池や貯水池(貯留水と呼ぶ)の持つ未利用熱をヒートポンプの熱源として活用する新規熱源システム(RSHPシステムと呼ぶ)の開発を目指し、本年度はヒートポンプからの放熱を貯留水に与えた際の自然対流による鉛直混合現象のモデル化について取り組んだ。 既往の研究により、自然状態の貯留水における上下方向の混合現象に対しては、「連行則」が適用できることがわかっている。これは、秋から冬にかけて温度成層から均一な温度場に移行する際に、水表面が冷却され発生する自然対流による混合の程度(連行係数)が、成層安定度に対する自然対流強度の比であるリチャードソン数の-1乗に比例することを意味する。本研究では、大気や水域の自然状態で実証されたこの関係がRSHPシステムの放熱過程に適用できるかを実験により検証した。 1)模型実験システムの構築:底面積0.1m2、高さ2mの透明塩ビ板製の鉛直水柱模型を作成した。中には水を充填し、夏季の温度成層相当の低温/高温の二層構造を与えた状態で、ヒートポンプからの放熱を模擬した底部からのヒーター加熱を行う際の水温変化を詳細に測定するシステムを構築した。 2)モデルの適用性の検討:実際の運用を想定した温度条件やヒーター加熱量を設定し、自然対流による鉛直混合の過程をリチャードソン数と連行係数の関係で示した。その結果、既往の研究では不明であったRi=100~300の範囲についても連行則を適用できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は模型実験システムを構築し、当初予定した実験とその考察は全て終了した。ただし、実験では面ヒーターを用いて鉛直方向の放熱過程にのみ着目してきたが、実際のシステムにおいては熱交換器の設置間隔により水平方向への拡散も考慮する必要があるため、今後は発熱方法を変えるか、模型に改良を加えるなどして、より現実に即したデータの取得に取り組みたいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画とおり、次年度はまず熱源温度予測プログラムの構築に取り組む。 貯留水温度に影響を与える要因は、①水面での短波・長波放射や潜熱・顕熱交換量等の熱授受、②短波放射の水中透過、③流出入、降水等の質量の授受、④風応力や自然対流による混合に大別できる。本研究では、RSHPシステム使用時の熱源温度を簡便な手法で予測することを目的に、①~④の各要素の他、⑤貯留水底部での放熱/採熱を考慮した数値計算プログラムを開発する。 具体的には、鉛直一次元の温度成層モデルを考える。基本的には上記①~⑤の境界条件を与えたときの上下方向の熱移動と混合を解く。このとき、自然対流または風応力による乱れと重力安定度がつりあうように混合量を逐次算出し、各層の境界面位置を更新する。夏にRSHPから放熱するときの放熱層における混合量の算出にH26年度の模型実験で得たパラメータを使用する。 以上のプログラムを用いて、夏季に放熱、冬季に採熱を与えた場合の熱源温度の年間挙動を計算し、自然状態での温度と比較した放熱/採熱時の上昇/下降度を確認する。また、運転停止による温度回復の度合いについてもパラメータとなる気温や風速との関連性から考察する。 また、地域に固有の条件(気象条件,貯留水深さ)や運用条件(放熱/採熱出力,日運転時間)をパラメータとして変更したときの年間熱源温度および熱利用ポテンシャルを算出し、RSHPシステムに適した立地条件を明らかにするとともに、空気熱源方式に比して高い効率で運転するためにはどのような運用が適切かを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、追加で検討すべき事項が明らかになったが、時間的な制約により実験の実施には至らなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度の残金は、追加実験の実施のための準備費用、特に多点温度センサーの購入に充てる予定である。
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