本年度は、1)多世代の家プロジェクトの現地調査と、2)国内での居住者による自主運営(事業者が介在しない)のシェアハウスの運営実態・暮らし方調査を行なった。 1). ドイツ連邦家庭・高齢者・女性・青少年省 による家族支援のための環境整備と世代間関係の強化に焦点を充てた多世代ハウスプロジェクトについて、シュツットガルトとベルリンという都市部での利用実態に着目し、事業者へのインタビューと利用者の行動観察調査を行なった。本プロジェクトは、既存の福祉団体や保育園を運営する法人、NPO や市民ボランティア団体など既存の母体団体が、新たに世代の交流というコンセプトを取り入れ、従来の活動の幅を広げるかたちで展開される。バブリック・リビングルーム(開かれた集いの場)の設置が条件となっており、交流活動を行う場であるとともに、食卓を囲むことで交流を図るなど「施設びらき」を行う。行動観察調査より、施設が提供するプログラム(ヨガ教室、高齢者の体操教室、幼稚園の送り迎えなど)の前後に、パブリック・リビングの利用が増える。近隣の社会人がレストラン変わりにパブリック・リビングを訪れるなど、世代や職業に関わらず利用されている。コーヒータイムに時々訪れる職員や子供を介してのコミュニケーションが多く見られた。 2). 本年度は、立地によって異なるシェアハウスの役割を把握するため、地方都市や地方、郊外での調査を行った。調査より、被災地のシェアハウスでは移住者の窓口的役割、地方の商店街では新たな若者まちなか居住としての役割、地方都市では転勤による新規転入者の交流のきっかけとしての役割を果たしていることを把握した。また、郊外住宅地では、シェアハウスの一部を、店舗・アトリエ・事務所を併設した事例もあり、住むことに特化してきた住宅地の新たな可能性と言えるだろう。
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