研究実績の概要 |
わが国では低出生体重児の頻度は約10%と1980 年代に比較し約2 倍に増加し,先進国で最も頻度が高い.これらの解決に向けた将来ビジョンとは,国民の活力向上,いきがい,若者の国際競争力の向上,すなわち,<心身ともに健康でハイパフォーマンス>を発揮できる社会である.そのために,達成すべき課題は,国民ひとりひとりの生産性を左右する心身の健康,現世代の健康のみならず,<次世代の健康>である. 本研究では,“母子の健康状態”に地域環境がどのような影響を与えているか,という点に着目し, 個人の生活スタイルを含む,地域環境要因が“母子の健康状態”に与える影響構造を明らかにする事を目的としている. 平成26年度について以下の項目を実施した. (1)個人生理要因の分析① 研究対象者の年齢,出産回数,教育歴等の個人要因を得る. また,医療機関の医師により得られる妊娠初期の体重,身長,生化学指標,血中の化学物質濃度,児の出生体重などの生理要因より,母子の客観的栄養状態を把握した. ②所属する研究機関で実施されたコホート調査などの既存データより,分析対象とするデータについて解析を進めた.(2)地域構造要因の分析① 居住地域の地域度を表す変数として<可住地人口密度>,居住地域に配されている生鮮食料品店,スーパー,コンビニなどの商業施設に代表される<施設要素>を抽出した.②これらの要素を地理情報システム(GIS)で集計し柏市の小学校区ごとの統計情報を得た. これらの研究成果について,地理情報を用いた,生鮮食料品と高齢化率との解析結果を今夏開催される2015日本建築学会大会で発表予定.また漁港との近接性と食品に含まれる化学物質との分析について9th World congress Developmental origins of health and diseaseで発表予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究機関で実施されたコホート調査は順調に進んでおり,新規及び既存データも含め個人生理要因の分析対象とするデータの解析が行えている. 地域構造要因の分析においても,GIS及び統計情報を用いて順次解析を行っており,上記のように,本研究の達成度について,概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策について,引き続き実施しているコホート調査により得られた情報を加え,分析を行っていく.
また上記に加え,社会経済要因の分析①社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)を代表する要因として,<地域信頼性>,<地域互助性>などの要因,個人の社会活動を計る指標として用いられる,政治,産業,宗教,自治会等のグループへの参加の度合い<垂直的組織参加率>,趣味の会,スポーツクラブ,ボランティアグループなどへの参加の度合い<水平的組織参加率>,経済因子として個人の<等価世帯所得>(家計所得を世帯人数の平方根で除したもの)を,コホート調査質問票より集計する.②個人の集計結果を地域ごとに集計し,地域の指標を得る. また,所得情報より,地域の所得格差要因としてジニ係数を算出する. 〈統計解析の実施〉 個人生理要因,地域構造要因,社会経済要因の3指標のデータについて,相互に,相関分析や多重ロジスティック回帰分析を順次実施していく.
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次年度使用額の使用計画 |
主として,個性化発表のための国内旅費及び,外国旅費,資料整理や論文校閲などの研究推進に使用する予定である.そのほか研究遂行必要経費として,交通費,印刷費,消耗品費などに使用する予定である.
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