本研究は、既成市街地における住宅政策の役割と方法を検討するために、1950~60年代に既成市街地で建設された共同住宅のなかに、住宅金融公庫や雇用促進事業団などの政府系機関からの公的資金の融資・助成を受けて建設された賃貸住宅や給与住宅があることに着目した。当時の公的融資を通じた住宅供給の主体は、地方公共団体の住宅協会・住宅公社と民間事業主である。後者の場合、戸数規模が小さく市街地に散在しているため、都市のなかで網羅的・体系的に認識される機会はほとんどなかったが、本研究ではそれらを共通の政策理念や手法にもとづく成果として、面的にまたは群として市街地のなかで再評価するための基礎的な知見を得た。
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