本研究の目的は、シルバーカー及びベビーカー利用者を対象として公共交通アクセシビリティを評価することである。 ベビーカーに加速度センサを装着した歩行実験を行った結果、階段やエスカレータを回避し、EVを利用するための遠回りが確認できた。そこで地下鉄駅出入口から改札までの地下調査、坂道、階段、歩道橋、横断歩道等の地上調査から、ノードとリンクに重み付けを与えた歩行空間ネットワークデータを構築した。GISのネットワーク分析からベビーカー歩行と一般歩行の地下鉄アクセシビリティを比較した結果、ベビーカー歩行の到達圏は狭く、到達圏の形状は出入口条件や道路状況によって異なることが分かった。実際にベビーカーを利用しているユーザーにアンケート調査を行った結果、回答者の80%以上は駅へのアクセスが不便になったと感じており、「EVはあるが設置位置が悪い」という理由が最多であった。アンケート結果を解析結果と照合した結果、ユーザーの意識と解析結果に関係が見られた。 シルバーカーを使用する世代の外出傾向を探るため、65歳以上のシニア被験者に3日間GPS を所持してもらい、外出傾向と移動手段の選択理由を把握した。シルバーカーを使用した歩行実験では、心拍機能付きGPS腕時計をシニア被験者に装着してもらい、歩行時の身体的負荷及び心理的負荷を把握した。歩行時の負担と街路空間の関係を明らかにするため多重ロジスティック回帰分析を行った結果、通常歩行では街路や隣接道路 の交通量など周辺環境が歩行時の負担に影響するのに対し、 シルバーカー歩行では傾斜下り、横傾斜、段差などのバリア が影響していることが分かった、シルバーカーは身体レベル の低い人程、歩行の負担を軽減させる道具として機能しているが、負担と感じるバリアが増えることも分かった。
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