研究課題/領域番号 |
26820268
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
加藤 悠介 豊田工業高等専門学校, 建築学科, 准教授 (80455138)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ファミリーホーム / 社会的養護 / 家庭養護 / 居住環境 |
研究実績の概要 |
本研究は、社会的養護の居住環境のうち、家庭養護のひとつである里親ファミリーホーム(以下、FHと略す)の役割や空間的・運営的特徴について明らかにし、児童養護施設などの施設養護との比較分析を加えながら、養護環境による居住支援のあり方を考察することを目的としている。 研究の初年度である平成26年度は、現地調査にもとづきFHにおける養育手法や生活実態を捉えた。調査対象は愛知県にある4つのFHとし、現地においてそれぞれの養育者に対してヒアリング調査を実施した。平面図を事前に提供してもらい、開設の経緯、運営方法、生活の様子などについて、図面で確認しながら質問した。調査時間は平均4時間であった。その結果、以下のことが明らかとなった。1)朝食、夕食ともに子ども全員が揃ってから行っており、ダイニング空間が生活リズムの中心となっている。2)FHに実子がいる場合、養育している子どもが就寝した後に養育者が実子との時間を確保する状況がみられる。3)空間利用からみると、養育者が子どもの自立を考慮しており、すべてのFHで年齢が上がるにつれて養育者から離れた位置の子ども部屋に移動する。4)養育者は特にFH内のコミュニケーションを重要としているが、養育者に児童養護施設での職員経験がある場合は、子どもとプライベートな話に関しては場所を変えて1対1で行う傾向がみられる一方で、里親経験のある養育者の場合は、食事などの普段の生活のなかで話をする傾向がみられ、養育者の経験によってコミュニケーションの位置づけは異なる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の目標は、居住環境との関わりからみた生活実態がほとんど明らかになっていないFHの特徴、すなわち、持ち家や改修の有無などの建物的状況、養育する子どもの人数や補助員の採用といった事業計画、食事や就寝、入浴における住まい方や居住空間との関係など、FHの状況や課題について、事例をベースに多面的な視点から捉えることである。 平成26年度は、事例数が予定より若干少ないものの、現地調査によりFHが抱える具体的な課題や特徴について明らかにできた。加えて、文献調査により、児童福祉学や心理学の分野からFHでの養育者によるケアの役割や子どもの自立と環境の関係性について整理することができた。これらの成果は今後の研究活動の基礎的知見になると考えている。 以上のことから、現在までの達成度を「おおむね順調に進んでいる」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、これまでの知見にもとづき、全国に200カ所程度あるFHを対象としたアンケート調査を実施する計画である。具体的には、FHの平面プラン、住まい方、養育する子どもの属性、養育者の特徴、子どもの自立やケアに関する方針、立地状況などを集計データ化し、FHの類型化を試みることで全国的な傾向と課題を整理する。アンケート調査の回収率を高める方策として、今回の調査では多くのFHが加入する日本ファミリーホーム協議会の協力を得て行う予定である。 また、事例ベースの調査も引き続き実施する計画で、質的研究の観点から、新しく養育する子どもを迎えた直後からの生活の変化、子どもの成長と住まい方の関係、自立した子どもにとってのFHの意味や役割などについて記録、分析していく予定である。
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