研究課題/領域番号 |
26820269
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白 佐立 東京大学, 教養学部, 助教 (70636571)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 集合住宅 / 戦後台湾 / 生活様式 / 市場 / 住宅史 / 都市民俗学 |
研究実績の概要 |
本研究は戦後台湾集合住宅における住民の生活様式を解明するものである。本年度は以下の項目を実施した。 (1)在来空間形式の特定:本年度は文献の収集を中心に実施した。そして収集した公営住宅の図面と、伝統的家屋および伝統的漢人市街地の構成とを比較し、その類似性を分析することで、公営住宅の中に「移植」された在来空間として「重層家屋」、「市場」、「和室」、「神壇」、「廟」「玄関化する階段室/廊下」が存在することが浮かび上がってきた。次年度では、台北に現存している公営住宅のフィールドワークを通して、これらの要素の「移植」された経緯を明らかにする予定である。 (2)戦後台北市における「攤販(露店)」と「市場」の形成と変遷についての考察:新聞記事および台北市議会の議事録を精査することで、台北市における露店管理が、公有市場への集約から、集中場の認可へと集約していったこと、すなわち政府の方針が露店取締のための市場建設から、現状追認へと変化していったことを明らかにした。また、その前者の取締にしても強力に政策を推進しなかったがゆえに、伝統的な小売り形態である攤販と市場が消失してスーパーマーケットやコンビニエンスストアに画一化されるという状況が発生せず、現在の台北市の魅力的な市場および攤販集中場(例えば士林夜市)が形成されたとも考えられる。 (3)華光社区集合住宅に関する文献調査:上述の公営住宅の他に、1976年に台北市政府によって計画・建設され、のちに払い下げた華光社区集合住宅は計画段階から「重層家屋」および「市場」が含まれており、また住民によって集合住宅の外部空間に「廟」が建設された。次年度のフィールド調査の準備として、必要な図面、新聞記事、書籍、公文書の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・1940年代~1980年代の台北市議会議事録および必要な新聞記事の収集を予定通り完了した。 ・生活様式の解明することによって、現在の都市空間の解読可能性の見通しができた。 ・研究結果の一部は第10回アジア建築交流国際シンポジウム(10th International Symposium on Architectural Interchanges in Asia)で「Raised-floor Spaces in Newly Constructed Urban Dwelling in Postwar Taiwan」を発表した。市場の考察に関する内容は2015年度日本建築大会での発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
・昨年度に比較研究を行うための香港およびシンガポール調査はカウンターパートの都合によって、行うことができなかったため、次年度に変更する予定している。 ・積極的に現在の空間使用状況および住民のライフストーリの聞き取りを行い、公営住宅の内部空間と室内空間における在来空間形式の形成経緯、人と空間の関わり方を明らかにすることによって、住民を通して生活様式の連続性を書き出すことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の交付申請書の平成26年度の研究実施計画において、初歩的な比較研究を行うために、台湾の公営住宅において参照されることの多かった香港とシンガポールに文献およびフィールド調査を行うと記載したが、昨年度にカウンターパートの都合によって、海外調査が平成27年度に延期した。したがって、旅費として使用予定の100,000円を平成26年度から平成27年度に繰越した。
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次年度使用額の使用計画 |
香港とシンガポールの1970年代までに建設された公営住宅をそれぞれ5日程度現地調査を行う。次年度使用額を旅費として使用する。
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