研究課題/領域番号 |
26820274
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
伊藤 喜彦 東海大学, 工学部, 准教授 (40727187)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イベリア半島 / 中世都市 / 教会 / モスク / 宗教 |
研究実績の概要 |
2016年9月にコルドバ市調査を実施、基本的二次資料の把握と収集、市アーカイヴ、司教区アーカイヴ、州立コルドバ県アーカイヴ、コルドバ大学、カハ・スル財団アーカイヴにて関係者と意見交換、資料やデータベースを閲覧した。また大聖堂=メスキータ、サン・パブロ修道院、サンタ・マリーナ教会、サン・ミゲル教会、サン・ニコラス教会とその周辺の実地調査を行い、司祭や関係者にヒアリングを行った。 前年度のレオン調査に引き続きスペイン初期中世の最重要都市コルドバは、イスラーム都市の特徴を現在まで残すのみならず、13世紀半ば以降都市がキリスト教化する過程を明らかにする格好の事例である。本調査によって、宗教勢力と中世都市形成の関連性をあきらかにするための地歩が固められたと考えられる。 これまでの調査により、レオン、コルドバの中世都市研究の現状を把握することができた。 両者は後期中世にはカスティーリャ王国の各地方における中核都市となり、それ以降19世紀まで、「マヨール広場」の建設、一部の都市修道院施設や貴族の邸館の建設、それに伴う街路やインフラの整備がなされたものの、基本的に中世につくられた旧市街をよく残す。 しかしレオンがコンパクトな市域のなかに大聖堂とその参事会、サン・イシドーロ教会とその参事会がおさまり、両者の緊張関係のなかで都市形成が成されたのに対し、広大なコルドバ旧市街における宗教勢力の役割はそのような図式で論じることが難しいように思われる。いずれにせよ、コルドバに関しては、資料・先行研究ともに、大聖堂=メスキータに関するものに圧倒的偏りがあり、今後市域内に散らばっていた地区モスクとその周辺の様相(主として考古学的知見から)、またレコンキスタ後の教区教会・修道院の役割(とりわけフェルナンディーナと呼ばれるフェルナンド三世によって建設された教会堂群)について検討しなければならないだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はわが国においてはこれまでほぼ行われてこなかった類のもので、申請者個人が単独で行っている、比較的大きなテーマであるので、今後の研究発展のための基礎調査や資料の収集と整理がきわめて重要である。そのため成果発表・アウトプットは最終年度以降に予定しているが、助成を受け調査は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
第三(最終)年度に国内、国外での成果発表が予定されている(2016年5月パレルモ大学でのMediterranean Studies Association主催の国際学会、ならびに2016年8月福岡大学での日本建築学会大会において)。発表の場でのフィードバック等を活かしながら最終年度後半から論文執筆に取りかかる予定である。
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