研究課題
本研究は、11世紀から13世紀頃における内裏・院御所・公家住宅を、宮廷女房日記を基礎史料に、古記録・指図・絵巻を照合し、その使い方を復原することを目的とする。本年は、昨年からの検討課題である、女房装束の打出の作法を有職故実書と指図から究明した。(1)「女房装束打出押出之事」(宮内庁書陵部蔵、19世紀)を翻刻し、古記録に示された打出の用例を抽出した。打出の用法と領域は、①妻戸に設置する(使者のための明示など)、②儀礼の空間を装飾する、③女性の座を示す機能がある。絵巻等では、外部の簀子や庭に向かって装飾された打出が表現されることが多いが、内部空間にも出された。打出の意匠は、多種多様な選択がある。特に『兵範記』仁平2年(1152)3月7日条鳥羽天皇五十算賀における女院の女房達の打出は、四色に限定しながらも、一人ひとりがすこしずつ色彩が異なるなどの院政期の趣向がみられる。(2) 12 世紀から 14 世紀における古記録所収の指図に示された打出を検討した。儀式空間に設置される例では、寝殿の東あるいは西の2~3ヶ間、北面の東あるいは西の渡殿や二棟廊に向けて置く事例が確認できる。儀式空間の境界を明示する意味が窺われる。親王誕生の五十日においては、母后の座を示す際に打出が出され、天皇座の際に引き入れた。つまり、儀式時に設置された打出は、会場に姿を現さない后宮・北政所(その女房)の存在を暗示した可能性がある。打出は、管見の限りでは、足利将軍義持・義教・義政の拝賀まで継承されている。今後は、12 世紀から 16 世紀頃の古記録を通観することで、打出を女性の座とする意味がいかに継承され、あるいは変容したのかを明確にしたい。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
国文学研究資料館紀要文学研究篇
巻: 44号 ページ: pp.93~124
比較日本学教育研究部門研究年報 第14号、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科国際日本学専攻編
巻: 第14号 ページ: pp15~25
Studies in Japanese Literature and Culture Borders
巻: オンラインジャーナル ページ: オンラインジャーナル