本研究は、11世紀から13世紀頃の内裏・院御所・公家住宅を、宮廷女房日記を史料に、行事時の使い方を検討するもので、女性の空間を演出する打出(女房装束を几帳に架け、几帳帷子を中央に、2具の袖口と褄を御簾の下から出だす)の解明を目指した。打出は、女性の御所を示す演出で、女院や后に侍る女房が出だす、儀式の途中で女院の座を創るために出だす例がある。儀式空間に設置される例では、寝殿の東あるいは西の二~三ヶ間、北面の東あるいは西の渡殿や二棟廊に向けて置き、儀式会場や上位の方角を示した。打出の消失は、室町時代頃からみられ、歌合等の男女が共有する行事がなくなり、儀礼空間に女房の存在が失われたためと考えられる。
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