研究課題/領域番号 |
26820282
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
塚田 祐貴 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00620733)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フェーズフィールド法 / マルテンサイト変態 / 鉄鋼材料 / 高強度鋼 |
研究実績の概要 |
本研究は、ミクロ組織形成シミュレーションにより、高強度鋼のマルテンサイト組織形成機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、フェーズフィールド微視的弾性論に基づき、マルテンサイト変態に伴う変態ひずみ、オーステナイト母相およびマルテンサイト相のすべりを考慮することにより、マルテンサイト組織形成シミュレーションのためのフェーズフィールドモデルを構築した。マルテンサイト相については{110}<111>すべり系の中の4すべり系、オーステナイト相については{111}<110>の12すべり系を考慮した。また、マルテンサイト相が成長する際に、オーステナイト相のすべりに起因するeigenひずみ場がマルテンサイト相内部にそのまま引き継がれると仮定した。初期組織はオーステナイト相とし、格子欠陥(転位)からマルテンサイト相が生成して成長する過程を解析した。本年度得られた成果は以下のとおりである。
1.オーステナイト相のすべりが生じないと仮定し、マルテンサイト相のすべりのみを考慮したシミュレーションを実施したところ、オーステナイト相の{111}面近傍に晶癖面が形成される結果が得られた。さらに、オーステナイト相とマルテンサイト相の両相のすべりを考慮したシミュレーションにおいても、{111}晶癖面が形成される結果が得られた。以上の結果から、オーステナイト相のすべりの有無は、{111}晶癖面形成に大きな影響を及ぼさないことが明らかとなった。
2.オーステナイト相とマルテンサイト相の両相のすべりを考慮したシミュレーションにおいて、すべりに起因するひずみは、周囲のオーステナイト相に比べてマルテンサイト相内部の方が大きいことが明らかとなった。さらに、マルテンサイト相内部においては、すべりに起因するひずみの50%程度がオーステナイト相から引き継がれたeigenひずみであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルテンサイト変態に伴う変態ひずみ、オーステナイト母相とマルテンサイト相のすべりを考慮した組織形成シミュレーションにより、{111}晶癖面が形成される様子が再現された。実際、高強度鋼のマルテンサイト変態において{111}晶癖面が出現することは、過去に実験的に明らかにされている。本年度は、当初の計画どおり、高強度鋼のマルテンサイト組織形成を再現できるフェーズフィールドモデルを構築することができた。また、組織形成シミュレーションにより、オーステナイト相のすべりの有無が{111}晶癖面形成に及ぼす影響を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
構築したフェーズフィールドモデルに基づく組織形成シミュレーションにより、各種物性値がマルテンサイト組織形態形成に及ぼす影響を明らかにする。さらに、マルテンサイト相の周囲のオーステナイト相の弾性場を解析することにより、新たなマルテンサイト相の優先的核生成サイトを可視化し、マルテンサイト組織形成機構の詳細を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、シミュレーションを高速化するためのGPU搭載高速計算機を導入予定であったが、GPU解析プログラムの開発が未完了のため、高速計算機の導入を次年度に変更することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
GPU搭載高速計算機を導入し、シミュレーションの高速化を図る。
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