研究課題/領域番号 |
26820288
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
陳 春林 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (50614989)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機能性セラミックス材料 / 転位 / 電子顕微鏡 / ナノインデント / 破壊 |
研究実績の概要 |
本研究では、透過電子顕微鏡その場ナノインデンテーション法を用いて実用機能性セラミックス材料における極微視的な変形破壊ダイナミクスのリアルタイム(動的)計測を行い、巨視的な破壊に起因する様々な動的挙動「き裂進展・転位運動・格子欠陥形成・相転移や粒界相互作用」の知見を得る。 構造セラミックス材料の信頼性(強度特性、寿命予測、材質劣化、環境順応性)については実用上、最重要課題であるが未だ解決すべき問題が山積している。材料信頼性の向上の実現には、強度や変形破壊に起因するダイナミクスの素因子(発現メカニズム)を微細組織(格子欠陥, 粒界構造, 不純物分布)さらには原子構造や化学状態(電子状態)と関連づ けて材料設計・プロセス技術を制御できるかが鍵となっている。 原子・ナノ領域の極微視的「材料強度学」に至っては塑性変形機構(結晶転位論)程度であり、原子ナノレベルき裂発生からマクロレベル損傷破壊に至る変形破壊ダイナミクスの諸現象について学術と工学の両面からも十分に体系化されていない。その理由の一つは、原子・ナノオーダーでの材料の力学計測技術の欠如であった。 本研究では、高精度化した透過電子顕微鏡(TEM)ピエゾ駆動ナノインデンターを用いて、実用セラミックスにおける原子ナノ変形破壊挙動をその場観察し、材料強度学への新展開「極微視的ダイナミクスの基礎的知見の導出」を目差す。モデル系として、共有結合性セラミックスである立方晶系窒化ホウ素(c-BN)結晶やイオン結合性セラミックスであるAl2O3結晶を採用した。電顕内その場ナノインデンテーション実験をSiC、c-BNおよびAl2O3結晶を用いて行い、動的な微細結晶構造の変化を捉えることに成功した。初期の変形領域では転位の動的挙動、破壊の段階領域ではクラックの形成過程や伝播挙動を原子スケールで観察にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通り、初年度は電顕内その場ナノインデンテーション実験をSiC、c-BNおよびAl2O3結晶を用いて行い、動的な微細結晶構造の変化を捉えることに成功した。初期の変形領域では転位の動的挙動、破壊の段階領域ではクラックの形成過程や伝播挙動のを原子スケールで観察した。SiCおよびc-BN材料では、塑性変形領域は空間的にもタイムスケール的にも極めて狭く、クラックの形成・伝播が支配的であることが明らかになった。初年度の計画はおおむね順調に進展している
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、成功している電顕その場観察をSiC、c-BNおよびAl2O3結晶にたいして行う。さらにTiO2およびMgOセラミックスにたいしても同様の実験を行う。また、インデンテーション実験を行った試料について、Cs-STEMにより、塑性変形領域で形成された転位の原子スケールの観察および電子状態分析を行う。同時に、第一原理計算に基づく、電子状態計算のシミュレーションも行う。最終的に、セラミックスの塑性変形過程およびクラックの形成過程・伝播挙動の動的メカニズムを原子スケールで明らかにする。
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