本研究では、優れた特性を示す非鉛圧電体を実現することを目的に、電界印可による結晶構造相転移を利用した材料開発を行った。具体的な対象として、結晶構造的に不連続な二つの結晶相をとり、さらに両者の生成エネルギーが拮抗した状態を実現することが可能と期待できるBiFeO3-BiCoO3固溶体薄膜を選択した。 薄膜の組成、厚さおよび基板を最適化することで、菱面体晶構造と巨大な正方晶歪みを有する構造を作り分けることに成功した。菱面体晶構造の薄膜において、圧電特性がCo置換量とともに向上することが明らかとなった。 一方、巨大な正方晶歪みを有する薄膜については、詳細な結晶構造解析の結果、結晶構造が単斜晶構造であること、そして、単斜晶歪みが大きいほど圧電特性が向上することが明らかとなった。このことは優れた圧電特性を実現する上で、電界誘起の分極回転も重要な役割を果たしていることを示している。
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