研究課題/領域番号 |
26820294
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
坂元 尚紀 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (80451996)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 薄膜 / AFM / 断面 / 応力 / 強誘電体 |
研究実績の概要 |
電子顕微鏡による薄膜断面の構造観察は、薄膜の示す諸特性と薄膜の微構造、結晶構造、配向性などとの相関について調査するため、一般に広く行われている手法である。しかしながら、電子顕微鏡では圧電性などの物性値を直接測定することは原理的に不可能である。もし原子間力顕微鏡(AFM)を用い、プローブを薄膜断面にアプローチすることができれば、薄膜断面の微構造のみならず薄膜内部の物性の同時測定も可能となると期待される。しかしながらこれまでにAFMを用いた薄膜断面の観察に関する報告は少なく、明瞭な断面画像を得るための試料加工方法や観察技術は確立していない。そこで本研究ではAFMによる強誘電体薄膜試料の断面観察のために試料の加工方法とその条件及び観察方法を検討した。 本研究ではSi基板上にCSD法により電極としてLSCO、LNOを堆積させ、その上にPMN-PT強誘電体薄膜を堆積させたものを用いた。この試料(PMN-PT/LSCO/LNO/Si)をダイヤモンドカッターを用いて3 mm×5 mmの大きさに切り出し、ディスクグラインダーを用いて断面を300 µm研磨した。研磨した試料の断面を更にCross section Polisher(CP)を用いてPMN-PT側またはSi基板側からArイオンが当たるように設置して研磨した。研磨後、断面を走査できるように設計したホルダーに試料を固定し、AFMにより薄膜断面の微構造を観察した。 CPを用いてPMN-PT側から研磨した試料は3つとも全て断面の薄膜部分に再堆積物と考えられる付着物が確認され、その量は研磨時間が長いものほど増加していた。一方、Si基板側から研磨した試料には薄膜部分に再堆積物は確認されなかった。この条件を最適研磨条件とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度はLiNbO3単結晶試料を用いた圧電応答像観察ならびに圧電測定における測定値の校正を行う予定であったが、薄膜断面構造観察に最も重要な要素である断面形成プロセスにおいて本来の膜構造と異なる微粒子(リデポジション:再堆積物)の付着現象が見られることが明らかとなった。この点は最終的な観察結果に極めて大きな悪影響を及ぼす可能性が高いため、まずこの問題を解決することを最優先課題とした。種々のミリング条件を検討した結果、通常のイオンミリング方で用いるセッティングと異なり、基板方向からイオンミリングを行うことによりリデポジションの低減に大きな効果があることを見出した。その後LiNbO3単結晶による圧電応答像観察を行い、I. のステップまでは終了している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定に比べてやや遅れているため、圧電応答観察による圧電定数の校正に平行して、薄膜断面の像観察と圧電定数分布の評価を行っていく予定である。カンチレバーを電極として使用しない手法による圧電測定については、その測定のためのセットアップは既に計画されており、今年度中の実測を目指したい。
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