研究課題/領域番号 |
26820298
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
清水 直 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (60595932)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電界効果 / ゼーベック効果 / 電気二重層 / 酸化物半導体 / イオン液体 |
研究実績の概要 |
近年、さまざまな物質の熱電特性が基礎物性および工学応用の両面から精力的に研究されている。これは、ゼーベック効果を応用することで廃熱から直接電気エネルギーを取り出すことができ、エネルギー問題の解決に重要な役割を果たすことが期待されるためである。本研究は、電気二重層トランジスタにより作り出される強電界を用いて、様々な物質の熱電特性の電気的な制御を行う。電界効果を用いることで、熱電特性の制御だけではなく、優れた熱電特性を有する電子状態を実現することを目標とする。 平成26年度は、ゼーベック係数を電気二重層の作る強電界により制御する手法を確立した。これは、本研究を進めて行く上での基礎技術であり、平成27、28年度研究計画を遂行するための土台となる。具体的には、以下の研究を行った。 ①電気二重層トランジスタ構造を有する、熱起電力測定システムの構築。ゲート電圧下での電気抵抗・熱起電力・ホール係数を同時測定できるデバイスおよび測定系の設計を行った。いくつかの半導体を用いて実際に測定を行ったところ、キャリア密度を連続的に変化させながら、熱・電子輸送特性を電界で制御できることがわかった。 ②酸化物半導体を用いて、①で設計した熱電測定用電気二重層トランジスタを作製し、ゲート電圧印加下でのゼーベック係数、電気抵抗を測定した。絶縁体領域から金属まで、キャリア濃度にして10の17乗から10の20乗 立方cmという非常に広範なキャリア濃度域で、熱・電子輸送特性を電界で制御することに成功した。 今年度におこなった研究成果は、国内学会・国際学会等様々な場所で発表した。また、本年度の研究結果は論文雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画は、熱電特性と電気伝導特性の電界制御技術の構築であった。申請者はデバイスおよび測定系の設計・開発を行った結果、上記「研究実績の概要」に報告したように、本年度の研究は順調に進めることが出来た。そのため、平成27年度への研究進捗状況・準備状況は十分であり、27年度も当初の計画通りに研究を推進する。 実際にいくつかの半導体に本技術を適用し、熱・電気特性の電界制御を行った。その研究結果は国内外の学会・ワークショップにて報告し、今後の研究の発展につながるディスカッションやコメントを得ることができた。また、研究目的の達成のために必要なデータ収集を行うことが出来たことに留まらず、液体ゲートを用いた電界印加下における酸化物表面の電子状態の理解や、低温における巨大熱電応答の観測など、当初は予期していなかった成果も得ることができた。したがって、当初の計画は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度において、「熱電特性と電気伝導特性の電界制御技術の構築」や、酸化物半導体において絶縁体から金属領域おける熱・電気特性の電界による同時制御に成功したことを受け、平成27年度は、当初の計画通りに「低次元物質(状態)における熱電特性の電界制御」に取り組む。 低次元物質では、バルク物質とは異なるバンド構造・状態密度に起因する、優れた熱電特性が期待される。低次元物質とは、層状化合物単結晶からクリーブして得られるナノシート、一次元構造をもつナノチューブ、もしくは強電界下での二次元電子系等を上げることが出来る。申請者は、これら低次元物質(状態)を用いた電界効果デバイスを作製しイオン液体を用いた強電界下での熱電特性の測定を行い、さらにバルク物質との比較から低次元物質の熱電特性を議論する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入に当たり、「研究計画調書」作成時と比べ、為替の大きな変動(ドルー円)及び消費税が8%に増税されたことを受け、物品の価格が変わった。そのため研究計画に支障が無い範囲内で購入物品を調整した結果、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が生じたので、27年度の物品購入費に充てる。具体的には、電界効果トランジスタ構造における熱電特性を評価するための測定器(ロックインアンプ)の購入資金に充てる予定である。
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