研究課題/領域番号 |
26820299
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研究機関 | 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー |
研究代表者 |
高橋 拓実 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー, 多々見G, 研究員 (30715991)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 磁場配向 / 低磁場 / 窒化ケイ素 / ガラスファイバー / グラフェン / 粒子複合化 / 複合粒子 / 微構造制御 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、26年度の成果をもとに、低磁場配向プロセス確立を目的とした配向シート作製を行った。さらに、本プロセスの汎用性の検証のために、従来法では配向不可能だった磁気異方性がないガラスファイバー(以下GF)への多層グラフェン被覆を試み、GFの低磁場配向とその配向挙動を検討した。主な成果は、下記のとおりである。 1.c軸配向Si3N4シートの作製 0.5テスラの磁気回路中で配向Si3N4のシート成形を行い、配向性をXRDで評価したところ、c軸配向は確認できたが、バルク体に匹敵する高い配向性は得られなかった。これは柱状のβ-Si3N4種粒子の長軸径が数十μmと大きいために、配向が完了する前に沈降してしまったためと考えられる。そこでより微細な多層グラフェン被覆β-Si3N4種粒子を合成したが、配向性は向上しなかった。ラマン分光法より、粗大なβ-Si3N4種粒子を母粒子とした場合は原料グラフェンパウダーと同程度の良好なG/D比を示すが、微細なβ-Si3N4種粒子を母粒子とした場合、G/D比が大きく低下することが明らかとなった。 2.GFの低磁場配向 多層グラフェン被覆GFの作製を行ったところ、フラットなGF表面がサブミクロン以下の微細粒子で被覆されていることを確認した。これをポリエチレングリコール中に分散し、磁場中に静置して配向挙動を実時間観察したところ、GFの長軸が磁場印加方向と平行に配向する様子が観察できた。さらに、多層グラフェン被覆GFをエポキシ樹脂中に分散、混合し、0.5Tの磁場中で硬化させたところ、GFの長軸が磁場印加方向に並んだ配向構造をもつコンポジットが得られた。これらの結果から、被覆された多層グラフェン由来の磁化率異方性がGFに付与されたことによって低磁場配向したことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度は、①低磁場配向プロセス確立を目的とした配向シート作製と、②本プロセスの汎用性の検証を目的とした多層グラフェン被覆GFの作製とその低磁場配向を検討した。
①については、シート内で配向させるための種粒子に課題が残っているが、種粒子の配向性を低下させる原因はすでに明らかにされており、おおむね順調に進展しているといえる。配向性を向上させるためには、種粒子の微細化と、高い結晶性を維持した多層グラフェンの複合化の両立である。特に、複合化後の結晶性は、原料粉の粒径や、複合化のための機械的処理条件に依存するため、後プロセスであるシート成形も含めて、これらの相互的な最適化が今後の課題である。
②については、従来の磁場配向法で理論上配向できないはずのGFを多層グラフェン被覆によって低磁場配向を達成したこと、および、複合粒子の配向メカニズム解明のためのモデル材料としてその配向挙動の解析にも着手していることから、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、前年度で明らかとなった課題を解決すべく、以下のことを試みる。 ①微細な多層グラフェン被覆β-Si3N4種粒子の合成:粒子径の微細化と、高い結晶性を維持した多層グラフェンの複合化の両立を目指して、機械的処理による複合化条件(回転数、出力、粉体の投入量など)の最適化を行う。 ②配向シート成形の連続生産化:バッチプロセスでの配向シート成形を達成した後、プロセスの連続生産化を試みる。具体的には、ドクターブレード装置を利用した配向シート成形装置の製作を行う。 ③複合粒子の配向メカニズムの解明:多層グラフェン被覆GFをモデル材として、その配向挙動を解析し、複合粒子の配向メカニズムを解明していく。
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