研究課題
平成28年度は、①多層グラフェン由来の磁気異方性(Δχ)を利用した低磁場配向プロセスを用いてc軸配向Si3N4シートを連続生産するための粉体とスラリーの最適化と、②モデル材料としてガラスファイバー(GF)や窒化ホウ素(BN)を用いた本プロセスの汎用性の検証を行った。主な成果は下記の通りである。①c軸配向Si3N4シートの作製多層グラフェンの粒径と機械的処理後のG/D比の関係を明らかにするために、合成β-Si3N4粒子に対して、粒径が異なる多層グラフェンを機械的処理にて複合化させた。その結果、β-Si3N4粒子よりも粒径が大きな多層グラフェンを被覆させると良好なG/D比を維持できることがわかった。これを原料粉体としてスラリーを調製し、ネオジム磁石からなる0.5テスラの磁場中で成形、焼成を行った結果、磁場印加方向にc軸配向性を示す緻密なSi3N4セラミックスが得られ、c軸配向方向とこれに垂直な方向で熱伝導率異方性を示した。また、ドクターブレード成形により、所望寸法のSi3N4シートを作製できた。しかし、シートの厚さ方向へのc軸配向は未達である。これはスラリーの粘度が高く、β-Si3N4粒子の配向が不十分だったためと考えられる。②モデル材料の低磁場配向GFと同程度の比重で粘度が異なる水溶液中に多層グラフェン被覆GFを分散させ、配向挙動をその場観察し、画像解析から配向速度と粘度の関係を明らかにした。その結果、GFの配向に寄与する磁気異方性の大きさが、文献値から見積もられたグラファイトのΔχとオーダーで一致し、被覆された多層グラフェンがGFの配向を支配していることが明確にされた。他方、多層グラフェンを被覆したBNの板状粒子を高粘度の樹脂中に分散させ、0.5テスラの磁場中で硬化させたところ、磁場印加方向に対してBN板状粒子の面が平行に並んだ配向構造をもつBN樹脂コンポジットが得られた。
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Advanced Powder Technology
巻: 27 ページ: 2005-2011
10.1016/j.apt.2016.07.006