炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は単一材料にはない優れた特徴(比強度,比剛性,耐摩耗性,電気・熱の伝導性に優れているなど)を有するため様々な構造物への適用が進んでいる。しかし,CFRPは衝撃を受けると,層間はく離など内部損傷をおこし強度を大きく低下させるため衝撃対策が重要な材料でもある。衝撃が生じる要因にはいくつかあるが,運用中に受ける衝撃としては落雷がある。従来の金属材料の場合には,機体に落雷しても重大な損傷が発生する可能性は低かったが,CFRPでは衝撃損傷として材料に蓄積される可能性がある。このような状況であるため,落雷による衝撃対策は重要である。にもかかわらずCFRPの雷損傷の研究としては系統的な研究はほとんどなされておらず,特に,落雷時にCFRPに加わる衝撃力の報告は見当たらない。そこで本研究では,CFRPを使用した構造物の安全性を高めるために雷損傷におよぼす落雷条件の影響を調査した。その結果,市販の装置では制御が困難な落雷条件の制御が可能なシステムを構築できた。そのシステムを用い落雷を制御することで,落雷時に発生する撃力の特徴を明らかにした。また,光ファイバ振動センサを用いることで,微小で高速な変形挙動でも計測可能で,撃力は数MHzの広帯域な周波数成分を含むことを明らかにした。さらに落雷損傷観察と光ファイバ振動センサにより計測された信号の比較により,落雷条件による動的な損傷挙動を推測することができた。
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