• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実施状況報告書

成長因子の安定的担持機能をもつバイオシールマテリアルの創製

研究課題

研究課題/領域番号 26820304
研究機関名古屋工業大学

研究代表者

小幡 亜希子  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40402656)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードバイオマテリアル / 有機無機ハイブリッド / 不織布 / 生分解性
研究実績の概要

本研究課題では、ポリグルタミン酸を活用したバイオシールマテリアルの作製および成長因子担持機能の構築を目指す。安全性の高い合成方法、成長因子の変性を抑えた担持システム、そして制御された生分解性と操作性を兼ね揃えた材料を実現する。本年度においては、ポリグルタミン酸(PGA)とシランカップリング剤を用いてPGA/シリカハイブリッド体不織布を作製し、化学構造の解析と生理環境下での安定性制御を目的として研究を進めた。
PGAは側鎖にあるカルボキシル基にカチオンを配位させることで水に可溶となる。今回は水酸化カルシウムを用いてCaPGA水溶液を作製し、シランカップリング剤であるGPTMSを加えることでハイブリッド溶液を作製し、エレクトロスピニング法により不織布を作製することに成功した。繊維径はスピニングの諸条件(印加電圧、押し出し速度等)や溶液濃度を調整することで制御が可能である。
FTIR-ATRおよびNMR解析より、PGAのカルボキシル基とGPTMSのエポキシ基間での結合およびGPTMS同士の脱水縮合によって、PGAのポリマーチェーンがクロスリンクしており、分子レベルでハイブリッド化していることを確認した。pH7.4緩衝溶液に浸漬し37℃にて保持した時の分解性を評価したところ、カルシウムとシリコンイオンを徐放しつつも、1か月以上は不織布が崩壊しないことがわかった。クロスリンクの状態および分解性については、水酸化カルシウムおよびGPTMS量を各々調整することで制御可能であることも見出した。引張強度試験の結果より、CaPGA不織布は脆性を示したのに対しハイブリッド不織布は塑性変形し、さらに最大強度は有意に高かった。よって、ハイブリッド化することで操作性の向上に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度は、基盤となるハイブリッド材料について、合成方法の確立、化学構造の解析、そして物性評価について主に進めてきた。とくに本研究課題が目指す材料設計として重要なポイントである、水のみを用いた合成方法を確立できたことで、バイオマテリアルとしての高い安全性の確保と同時に、導入するタンパク質等の成長因子の失活を抑制するのに有効と期待される。材料組成を変化させることで、ハイブリッド構造を分子レベルで制御することが可能であり、同時に分解性等の物性についても制御可能であることを見出した。つまり、生理環境下における安定性制御を確保できると考える。以上のように、本研究課題が目指す基盤材料として有効なハイブリッド材料の開発に成功した。
さらに、次年度に予定していたモデルタンパク質の導入試験についてもすでに一部進行しており、本ハイブリッド材料の有用性を示す結果を徐々に得ている。詳細な解析については次年度に進める予定であるが、タンパク質の失活を抑制する機能をもつ材料として大いに期待できる状況である。以上のことから、当初の計画以上に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

当初の予定通り、今後は本年度にて確立されたハイブリッド不織布を基盤材料として用い、これにモデルタンパク質を含む種々のタンパク質・生体分子を導入してゆく。得られた材料について、導入されたタンパク質等の機能発現を主に解析する。また、細胞培養試験により、基盤材料およびタンパク質等を担持させた材料の細胞親和性、および細胞に対する活性化効果を評価する。

次年度使用額が生じた理由

本年度の研究課題として、基盤となるハイブリッド材料の合成方法の確立、化学構造の解析、そして物性評価をあげており、それに関わる物品購入費を主な支出として計上していた。しかし、合成方法の確立のための研究が想定以上に順調に進み、それに伴い試薬・物品類の消費が抑えられた。次年度からハイブリッド不織布へタンパク質等の生体分子を導入して試験を進める予定であるが、当初予定していた生体分子以外についても検討を進めることで、ハイブリッド不織布の有用性をより拡大できる可能性が最近見出された。よって、より多くの試薬を購入する必要があり、次年度の使用額の増大が予想されることから、当該助成金にて調整することとした。

次年度使用額の使用計画

引き続きハイブリッド不織布を作製するための試薬を購入するのはもちろんのこと、不織布に導入するためタンパク質等の生体分子(モデルタンパク質を含む)、および導入した生体分子の機能発現について評価するための検査試薬やキットを購入する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) 産業財産権 (2件)

  • [雑誌論文] Poly(γ-glutamic acid) - silica hybrids with fibrous structure: effect of cation and silica concentration on molecular structure, degradation rate and tensile properties2014

    • 著者名/発表者名
      Akiko Obata, Shingo Ito, Norihiko Iwanaga, Toshihisa Mizuno, Julian R Jones, Toshihiro Kasuga
    • 雑誌名

      RSC Advances

      巻: 4 ページ: 52491-52499

    • DOI

      10.1039/c4ra08777a

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 有機無機ハイブリッド繊維のタンパク質担持機能2015

    • 著者名/発表者名
      小幡亜希子、岩永憲彦、市来健太郎、水野稔久、春日敏宏
    • 学会等名
      日本金属学会2015年(第156回)春期講演大会
    • 発表場所
      東京大学、東京
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-20
  • [学会発表] Fabrication of poly(γ-glutamic acid)-silica hybrid fibermats with protein-loading ability2015

    • 著者名/発表者名
      Makoto Shimada, Norihiko Iwanaga, Akiko Obata, Toshihisa Mizuno, Toshihiro Kasuga
    • 学会等名
      4th International Symposium on Ceramics Nanotune Technology (ISCeNT-4)
    • 発表場所
      名古屋工業大学、名古屋
    • 年月日
      2015-03-02 – 2015-03-04
  • [学会発表] ポリ(γ-グルタミン酸)・シリカ繊維構造体におけるタンパク質担持機能の評価2014

    • 著者名/発表者名
      岩永憲彦、市来健太郎、小幡亜希子、水野稔久、春日敏宏
    • 学会等名
      日本セラミックス協会第18回生体関連セラミックス討論会
    • 発表場所
      大阪府立大学、大阪
    • 年月日
      2014-12-05 – 2014-12-05
  • [学会発表] Electrospun silica-polymer hybrid fibres carrying protein2014

    • 著者名/発表者名
      Akiko Obata, Norihiko Iwanaga, Kentaro Ichiki, Toshihisa Mizuno, Toshihiro Kasuga
    • 学会等名
      6th International Workshop on Advanced Ceramics (IWAC-06)
    • 発表場所
      Erlangen, Germany
    • 年月日
      2014-09-28 – 2014-09-30
  • [学会発表] Crosslinking structure and degradation behaviors of poly(γ-glutamic acid)/silica hybrid2014

    • 著者名/発表者名
      Kazuya Suzumura, Jin Nakamura, Akiko Obata, Toshihiro Kasuga
    • 学会等名
      6th International Workshop on Advanced Ceramics (IWAC-06)
    • 発表場所
      Erlangen, Germany
    • 年月日
      2014-09-28 – 2014-09-30
  • [学会発表] タンパク質担持有機無機ハイブリッド不織布の作製2014

    • 著者名/発表者名
      小幡亜希子、岩永憲彦、前田浩孝、市来健太郎、水野稔久、春日敏宏
    • 学会等名
      日本セラミックス協会第27回秋季シンポジウム
    • 発表場所
      鹿児島大学、鹿児島
    • 年月日
      2014-09-09 – 2014-09-11
  • [産業財産権] 核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法2015

    • 発明者名
      水野稔久、小幡亜希子、市来健太郎、岩永憲彦
    • 権利者名
      名古屋工業大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2015-6431
    • 出願年月日
      2015-01-16
  • [産業財産権] タンパク質内包不織布の製造方法2014

    • 発明者名
      水野稔久、小幡亜希子、市来健太郎、小枝周平、柴田将英、岩永憲彦
    • 権利者名
      名古屋工業大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2014-143141
    • 出願年月日
      2014-07-11

URL: 

公開日: 2016-06-01  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi