研究課題/領域番号 |
26820304
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
小幡 亜希子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40402656)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオマテリアル / 有機無機ハイブリッド / 不織布 / 生分解性 / タンパク質担持 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、ポリグルタミン酸とシランカップリング剤(glycidoxypropyl trimethoxysilane, GPTMS)のハイブリッド体からなる不織布の作製に成功し、その化学構造解析および水溶液中での分解性評価を行い、目的とする材料として期待できることを確認した。本年度においては、得られたハイブリッド不織布の繊維内部にモデルタンパク質を導入し、水溶液中でのタンパク質漏洩および繊維内においても変性なくタンパク質活性を維持できるかどうか検討した。 モデルタンパク質として、蛍光タンパク質(GFP)および加水分解酵素(αキモトリプシン)を用いて検討した。GFPを導入したサンプルについてその蛍光スペクトルを測定することで、繊維内に導入されたタンパク質はほぼ変性しないことがわかった。また、水溶液中への浸漬実験結果より、浸漬後数時間はGFPが材料からほとんど溶出することなく、繊維内に保持されていることを明らかにした。その後、一か月ほどかけて材料が崩壊する様子が観察されたことより、担持物は材料の分解とともに徐放されることが示唆された。 この結果をふまえ、αキモトリプシンを導入したサンプルについては、p-ニトロフェニル酢酸を用いた加水分解速度を測定した。その結果、繊維内に導入されたタンパク質はその加水分解機能を維持していることがわかった。さらに、この加水分解機能を阻害する物質を用いた実験により、ハイブリッド不織布に導入されたタンパク質の大部分は、繊維表面ではなく内部に存在することを明らかにした。 上記のモデルタンパク質の他に、数種類のタンパク質やDNAzyme、分子量の異なる蛍光色素を担持させた分子等を導入し、これら担持物の活性が維持できていることや、分子量に依存した漏洩現象などを確認した。これらのデータについては、オリジナル論文としてリリースした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までに作製および解析してきたハイブリッド不織布に対して、本年度は新たにタンパク質等の担持機能の評価およびその徐放について検討した。本材料の特徴の一つである、水を用いた合成により、担持された物質はその構造を維持可能とし、繊維内においても機能を発現することを実証できた。また、いわゆる初期バーストと呼ばれる担持物の急激な漏洩などもなく、材料の分解とともに漏出されることがわかった。タンパク質だけでなく、これまで材料に担持させるのが難しかったDNAzyme等の物質に関しても、その機能を維持しつつ担持可能なことを見出せたことは、大きな展開につながると期待できる。以上のことから、当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、本材料における細胞の応答性評価を行う。まずは母材(ハイブリッド不織布のみ)に対する細胞培養試験を進め、その親和性を評価する。その後、モデルタンパク質や細胞の生物機能に働きかける物質を担持させた材料に対しても培養試験を行い、細胞の応答性変化を追及する。バイオマテリアルとしての有用性および担持物質の機能発現について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
再現性の高い合成条件を見いだせた結果、効率よくサンプル作製を進めることが可能となり、当初の予定よりも材料合成用の試薬や消耗物品を削減できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度は細胞培養試験をメインとして予定しており、培養用の試薬や消耗物品は滅菌物が多くそのため価格が高いものが多い。これらの購入費として使用する予定である。
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