研究課題
本研究課題では、バイオシールマテリアルの作製および成長因子担持機能の構築を目指した。安全性の高い合成方法、成長因子の変性を抑えた担持システム、そして制御された生分解性と操作性を兼ね揃えた材料を実現する。昨年度までに、ポリグルタミン酸とシランカップリング剤(GPTMS)のハイブリッド体からなる不織布に種々の分子やタンパク質を担持させ、繊維内部においても担持物の活性が維持できていることを実証した。本年度は、合成時に導入するカチオン種(CaとMg)が及ぼす材料物性および細胞応答性への影響について検討した。さらに、骨芽細胞の生物機能に作用すると報告のあるデキサメタゾンをハイブリッド不織布に担持させ、細胞応答性を評価した。本年度は、カルシウムイオンに加えマグネシウムイオンに着目した。マグネシウムイオンはカルシウムイオンよりも置換不活性であり、そのためハイブリッド構造の化学的安定性を高めると予想した。また、材料から溶出するカチオン種によって細胞の生物機能が変化することが、申請者らのグループの過去の研究を含め多く報告されている。Ca-不織布およびMg-不織布を作製し、緩衝溶液等の中での化学的安定性を評価した結果、Mg-不織布は分解速度が小さく、繊維構造をより長期間維持できることがわかった。さらに、Mg-不織布上において骨芽細胞様細胞がより高い接着率を示した。キサメタゾンを導入した不織布上にて、骨芽細胞様細胞の増殖性が促進された。また、デキサメタゾンの有無に関係なく、Ca-不織布よりもMg-不織布が高い増殖性を示した。昨年度得たデータより、デキサメタゾンはその分子量から、各不織布から溶出していることがわかっており、これが有効に作用したと予想する。以上より、本材料は細胞を活性化させる物質を担持可能であり、かつ生分解性の制御性や操作性を兼ね揃えているとわかった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Journal of Materials Science
巻: Online published ページ: 印刷中
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