研究実績の概要 |
研究計画に従って「フォトクロミック色素と紫外線蛍光体の選択と評価」を実施した。 ①フォトクロミック色素の選択と評価:東京化成製のスピロピラン2種類と新たにスピロピラン誘導体を合成して、それらの材料に対して吸収スペクトル測定を行った。結果としていずれの材料も大きな違いは見られなかったため、比較的安価で大量購入が可能な材料1',3',3'-trimethyl-6-nitrospiro[1(2H)-benzopyran-2,2'-indoline] (or 1,3,3-trimethylindolino-6'-nitrobenzopyrylospiran) (6-nitro BIPS)を最適なフォトクロミック色素とした。 ②紫外線蛍光体の選択と評価:紫外線発光体としてBaFCl:Eu2+,BaSi2O5:Pb,SrB4O7:Eu,YAlO3:Ceをネモトルミマテリアル社から入手し、X線発光特性を評価した。結果として、BaFCl:Euの紫外線発光領域が382nm、BaSi2O5:Pbが346nm,SrB4O7:Euが368nm,YAlO3:Ceが375nmであった。フォトクロミック色素の異性化に寄与できる波長は360nm付近であることからBaSi2O5:Pbが最も有力であると考えられたが、発光強度が低かった。従って総合的に評価した結果、紫外線発光体はBaFCl:Eu2+が最適であると判断した。 次いで上記の①②の材料を用いて、高分子複合フィルムをPET基板上に作製した。そのフィルムに対して大型放射光施設SPring8の放射光を照射すると1秒で照射部分が紫色に変化し、室温において数分で無色に戻った。これは通常目視することができない放射光を可逆的に可視化 する世界初の成果である。
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