平成27年度は、前年度に検討した炭化ケイ素(SiC)の接合部にケイ素(Si)ペーストを塗布し焼結させる新規接合法を発展させ、より緻密なSi焼結層を形成させるためのSiペースト作製条件を探索し、高強度の接合体を得ることを試みた。これまで同様、SiペーストはSi粉末をポリエチレングリコール中に分散して作製した。ペースト中のSi粉末の平均粒子径(メジアン径)および体積分率を約0.1~16μmおよび40~65%の範囲で変化させ、1300分・60分保持にて接合した。これらの実験の結果、平均粒子径を小さくしすぎるとペースト中でSi粒子が凝集し、体積分率を大きくしすぎるとペーストの流動性が失われ、いずれもペーストを接合面に均一に塗布できなくなることがわかった。ペーストを接合面に均一に塗布できる範囲内において、平均粒子径の低減と体積分率の増大とともに接合強度は増大し、本研究ではそれぞれ約5μmおよび約56%のSiペーストを用いた場合に最大の室温せん断強度(約60MPa)が得られた。このように、接合強度増大のための最適な平均粒子径および体積分率の選択指針を明らかにした。これらの知見に基づいて、連携企業による実証実験も進行中である。一方、前年度から継続の検討課題として、Siの融点を降下させる添加元素をSiペースト中に混合させ、1400℃以下の接合温度でSiの溶融・凝固により緻密なSi層を形成させることに成功した。この方法で得られた接合体は室温せん断試験において母材破断し、接合部の強度は母材と同等以上だった。また、接合温度における蒸気圧が高い添加元素を使用するとSi中から添加元素が蒸発・除去され、接合部の再溶融温度を維持したまま接合温度の低減が可能であることを実証した。
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