研究課題/領域番号 |
26820308
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
渡辺 雄二郎 金沢工業大学, バイオ・化学部, 准教授 (60410297)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゼオライト / セシウム / アパタイト / 複合化 / 焼結 / ナノ粒子 / イオン交換 / 環境浄化 |
研究実績の概要 |
本研究は蓄積してきたヨウ素固定化に関する研究成果を、セシウム(Cs)の固定化へ応用するため、プロセスの最適化を図り、福島第一原子力発電所及びその周辺における放射性Csの回収・長期安定化技術としての実用化に結び付けることを目的としている。本年度は、過去の研究成果から見出された一定の条件で、一連のCs回収・長期安定化技術の試行研究を行った。主な研究成果を以下に示す。 1.Ca型合成モルデナイト(MOR)表面への水酸アパタイト(HA)形成をリン酸アンモニウム水溶液を用いて80℃、8時間で行った。その結果、合成MOR柱状結晶の表面に約50 nmのHAリン片状結晶が多孔質かつ均一に形成されていることが明らかになった。純水及び0.6 M NaCl中におけるHA-MOR複合体のCs最大吸着量は、MOR単体と比較して減少するものの高い値を保持していた(純水中:0.99 mmol/g、NaCl中: 0.89 mmol/g)。また0.6M NaCl中における1000℃で焼成後の複合体のCs溶出率は、MORの一部が非晶質化したため、焼成前と比較して大幅に減少した(2.5%以下)。 2.アパタイトとのパルス通電加圧焼結法での複合焼結(圧力:50MPa, 焼結温度:950℃, 複合体量15 wt%)では、割れのない緻密な焼結体が得られ、MOR表面をアパタイトが覆っている様子が観察された。また常圧焼結法((50 MPaで一軸成型、反応温度:1200℃、有機バインダー5 %含有 複合体量20 wt%))においては、パルス通電加圧焼結と比較して焼結体の密度は低いものの、割れのない緻密な焼結体が得られることが明らかになった。得られた複合焼結体の0.6 MNaCl中におけるCs溶出試験では、いずれの複合焼結体も焼成体と比較して大幅に溶出率が減少し、特にパルス通電加圧焼結した複合焼結体の溶液安定性が高いことが明らかになった(0.3 %以下)。 以上の一連のCs回収・長期安定化技術の試行研究の結果から、本技術がCsの固定化にも有用であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は一定の条件における一連のCs回収・長期安定化技術の試行研究を実施し、本技術がCsの固定化に有用であることを明らかにできた。本研究は当初の計画通りに推進できており、次年度に向けて順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により本技術がCsの固定化に有用であることを明らかにした。この結果を踏まえて、今後はそれぞれのプロセスの最適化を行う。具体的内容を以下に示す。 1.モルデナイト表面への水酸アパタイト形成とそのCs吸着能の評価:本項目では天然および合成モルデナイト表面へのアパタイト形成を、従来のイオン交換プロセスを用いた溶液法で行い、反応時間依存性、反応温度依存性、リン酸塩濃度依存性等の実験を行い、アパタイトを均一かつ多孔質に形成する最適な条件を検討する。また最適化された複合体に対して海水、土壌排水、雨水等を想定した汚染水からのCs吸着能を評価する。 2.Cs吸着モルデナイト表面への水酸アパタイト形成:すでに使用されたゼオライトを想定したCs吸着ゼオライトの水酸アパタイト形成を交互浸漬法等の様々な方法で検討する。 なお、得られた結果は論文発表やホームページ等で積極的に公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、アルゴンガス、アセチレンガス等を使用する装置の連続使用や、プレス機で用いる金型や噴霧乾燥器で使用するチャンバー等の消耗品を丁寧に使用したため消耗が予想以上に遅く、これらを購入するための消耗品費を大幅に削減することができた。また研究を効率よく推進できたため、研究協力者への謝金を削減できた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度使用しなった噴霧乾燥器や金型等消耗品の購入、研究協力者への謝金等に使用する予定である。
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