研究課題
錯体水素化物は従来燃料電池用の高密度水素貯蔵材料として注目されてきたが、近年新たに次世代全固体二次電池の電解質へ応用可能な高速イオン伝導材料としても期待されている。本研究では、高速リチウムおよびナトリウムイオン伝導を示す新たな錯体水素化物の創製およびその伝導機構の解明を目的として進めている。昨年度は籠状構造の水素化ホウ素錯イオンを有するNa系錯体水素化物Na2B10H10およびNa2B12H12において、単斜晶から立方晶への構造相転移(Na2B10H10:約110℃、Na2B12H12:約260℃)に伴ってナトリウムイオン伝導率が大きく増大し、どちらも立方晶構造において0.01 S/cm以上のナトリウム超イオン伝導を示すことを明らかにした。本年度は、Na2B10H10およびNa2B12H12の錯イオン中の一つのホウ素Bを炭素Cに置換して得られるNaBC9H10およびNaCB11H12の構造相転移温度とナトリウムイオン伝導率について評価を行った。NaBC9H10とNaCB11H12の構造相転移温度はNa2B10H10、Na2B12H12と比較して大幅に低下した。NaCB11H12では約110℃で斜方晶から立方晶への構造相転移が起こり、立方晶構造において0.1 S/cm以上のナトリウムイオン伝導率を示した。構造相転移は可逆的に起こるため、110℃以下に冷却すると斜方晶構造へと戻りイオン伝導率は大きく低下した。NaBC9H10では約40℃で構造相転移が起こり、立方晶構造で0.05 S/cmのナトリウムイオン伝導率を示した。NaCB11H12と比較して構造相転移のヒステリシスが大きいため、室温まで冷却しても立方晶構造は保持された。その結果、室温でも0.02 S/cmのナトリウムイオン伝導率を示した。これらのNaをLiに置換したLiBC9H10およびLiCB11H12についても同様の評価を行い、それぞれ約80℃、約120℃での構造相転移後に0.01 S/cm以上のリチウムイオン伝導率を示すことを確認した。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
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