研究課題
金属陽イオンMn+(n :金属Mの価数)とAl-H結合の錯イオン([AlH4]-又は[AlH6]3-)のイオン結合で形成される錯体水素化物(Al系錯体水素化物)は、高密度に水素を含有し、比較的低温(摂氏150度付近)で水素を放出するため水素貯蔵材料としての応用が期待されている。しかし、その水素放出の反応素過程は、関連する錯体水素化物も含めて十分な理解に至っていない。そこで、当該研究では、純良なAl系錯体水素化物を系統的に合成し、その結晶構造、格子振動、水素放出特性を総合的に評価して、Al系錯体水素化物における水素放出の反応素過程を明らかにするとともに、これら知見を関連する錯体水素化物へ拡張することを目的として研究を行った。当該研究では、既存のAl系錯体水素化物に加え、新規Al系錯体水素化物の合成に成功した。これらの結晶構造を決定するためにAl系錯体水素化物を含む様々な水素化物の結晶構造を統一的に整理する手法を確立した。この手法は、結晶構造解析におけるブラベー格子と結晶構造中に含まれる原子の数(化学組成)の決定に利用でき、この手法を用いて当該研究で合成された新規Al系錯体水素化物の結晶構造が決定された。系統的に合成したAl系錯体水素化物の格子振動の観測は、ラマン分光及び中性子非弾性散乱を用いて行った。更に水素放出反応における格子振動を観測するために昇温過程で中性子非弾性散乱実験を行った。その結果、Al系錯体水素化物の水素放出反応は、水素放出の初期段階で金属陽イオンと[AlH4]-の間の化学結合が弱まり、その後、[AlH4]-のAl-H結合が切断されることで水素放出に至ることが明らかになった。関連する錯体水素化物も昇温過程で錯イオン周りの化学結合が弱まることから同様の反応素過程が示唆された。
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