研究実績の概要 |
本研究では、精密かつ柔軟な分子設計が可能な第三世代のパイ共役ポリマー材料の創製へ向けた合成アプローチとして、側鎖に精密設計したポリマー鎖を有するパイ共役ポリマーを効率的に合成する手法の確立を目指した。本研究の成果として、[1]ポリマー鎖を側鎖に有するパイ共役ポリマーの新たな合成手法の確立と[2]側鎖ポリマーと主鎖構造の機能が協奏する外部刺激応答性材料の開発に成功した。 まず[1]について、リビングカチオン重合を用いることで、パイ共役ポリマー前駆体となる種々の重合性官能基を末端に有するマクロモノマーを合成することに成功した。この結果、得られたマクロモノマーの末端基を反応させることで、ポリマー鎖を側鎖に有するブラシ状パイ共役ポリマーを合成することに成功した。このような手法による合成はこれまで報告例がなく、本研究が初めての成功例である(J. Poly. Sci., part A: Poly. Chem. 2014, 52, 2800., Kobunshi Ronbunshu, 2015, 72, 318., Chem. Lett., 2016, 45, 415.)。 続いて[1]で得られた新規パイ共役ポリマーについて、溶液状態での発光特性を評価した結果、溶媒の種類や温度に依存してJ会合体を形成し、それに伴い発光色や溶液色の可逆的な変化が誘起されることを明らかにした。さらに、種々の側鎖ポリマーを持つパイ共役ポリマーを合成し比較検討した結果、発光挙動と側鎖ポリマーの化学構造との強い相関を明らかにし、側鎖ポリマーを精密に設計することでこれらポリマーの自己組織化挙動ならびに蛍光発光特性を制御可能であることを見出した。このように精密に分子設計したパイ共役ポリマーの自己組織化共同について、多くの知見を得ることに成功した(Langmuir, 2015, 31, 2256-2261., Ange. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 8673-8678., J. Poly. Sci., part A: Poly. Chem. 2016, in press.)。
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