研究課題/領域番号 |
26820319
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
岸田 逸平 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 助教 (30419676)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イオン伝導 / 原子拡散 / グラフ理論 / 最小エネルギー経路 |
研究実績の概要 |
傾斜組成材料やイオン伝導体のように多数のサイトが不完全に占有されている結晶の構造解析を理論計算から行う手法、および多数のイオンサイトが協働的に機能するイオン伝導経路解析手法を確立することが本研究の目的である。イオンの遷移をグラフ理論で取り扱い,長距離伝導の可能な最小エネルギー経路を探索する手法を開発した。イオン性結晶の構造を占有サイト名の集合として把握して複雑な構造の情報を簡便に取り扱うことを可能にした。本手法は占有サイト解析にグラフ理論を組み合わせた遷移過程解析により、複雑な結晶構造をした超イオン伝導体におけるイオン伝導機構解明に貢献する。この手法は高い対称性を持ち等価な構造を判定することが煩雑である結晶や、セル内に多数のイオンサイト候補がある結晶、また複数のイオンが協同的に運動する結晶において特に強みを発揮する。 この手法をα-AgI に適用して有用性を確認するとともに、この結晶におけるイオン伝導機構と移動エネルギーを明らかにした。他の多くのイオン性結晶と同様,α-AgI においてもAg イオン同士がお互いに離れた位置にある時にエネルギーが低くなる傾向にあることがわかった.遷移過程の解析により,移動の過程においてもAgイオン同士は離れた位置を取るように協同的な挙動を取り,複雑な遷移過程を経ることがわかった.一般に広く用いられている構造最適化計算では不安定構造のエネルギーを評価できないことから、解析の初期段階においては特に一点計算が有用であることを明らかにした。本手法による解析ののちにNudged Elastic Band法を用いることで精度の高い移動解析を効率的に導けることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最小経路を探索する手法について、理論的背景の整理と問題解決アルゴリズムの構築、及びプログラムのコーディングが完了した。このプログラムを用いてこれまでに一つの結晶系について解析を行い、結果を導いた。この結果について日本セラミックス協会年会において発表を行った。 学術論文誌投稿に足りるだけのデータを出すことができたものの、現在は論文投稿準備中の状態である。1年目の年度内に論文投稿まで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まずはαーAgIの成果を学術誌に投稿し、広く公表することが第一である。 次に、本研究で開発する手法の拡張を行う。第一の解析として一点計算が有効であることが分かったが、より精度の高い解析のためには構造最適化計算を併用すべき場面がある。構造最適化計算の問題点は格子緩和によって原子座標が変化し、その座標によって占有サイトを判定する必要があるということである。そこで任意の座標についてサイトを判定するプログラムを開発する。また、これによって新たな結晶系におけるイオン伝導を解析する。
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