研究課題/領域番号 |
26820320
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
菊田 貴恒 日本工業大学, 工学部, 助教 (20599055)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高靭性繊維補強セメント複合材料 / 金属繊維 / 引張強度 / 破壊力学 |
研究実績の概要 |
26年度は引張強度20MPa以上の超高強度と高靭性を両立する調合設計や混入繊維に関する検討を中心に行った。高い引張強度を実現するため水バインダー比を10~15%程度まで低下させつつ、繊維を均一に分散させる適切な混和材料、減水剤の添加量について比較検討し、水バインダー比16%程度で、金属繊維を3Vol.%混入してもテーブルフロー値250mmという高流動を実現できた。 混入する繊維に関して金属繊維を中心に様々な検討を行い、物性の異なる2種類の繊維をマトリクスに混入するハイブリッド型の繊維混入が引張強度の向上に非常に効果が高いことが確認された。本研究では主に直径160マイクロメートル、長さ6mmの微小金属繊維と直径380マイクロメートル、長さ30mmの金属繊維との複合効果を検討した結果、微小金属繊維が入っていない場合は強度、靭性共に非常に小さくなるが、この微小金属繊維を過大(4Vol.%~5Vol.%)に混入しても強度と靭性の向上は頭打ちであった。一方、長く太い金属繊維については、引張強度、靭性能に及ぼす混入量の影響が非常に大きく、2Vol.%程度までは混入量の増加と共に、著しく引張強度が向上することが明らかとなった。 これらの検討から、微小金属繊維と太径で長い金属繊維を適切なバランスでマトリクスに複合混入することで、引張強度と靭性が向上することが明らかとなり、微小金属繊維を1.5Vol.%、太径で長い金属繊維を2Vol.%程度混入することで、おおよそ引張強度20MPa以上の超高強度を実現できることが明らかとなった。 これらの結果は、引張に弱いセメント系材料の弱点を克服するものであり、この新しい材料特性を生かすことで、まったく新しい構造形式の建築物が可能となってくると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度に予定していた、引張強度20MPa程度の超高強度を実現する材料開発は順調に進んでいる。また、ひずみ2%という靭性能に関する目標値ついては、人工的な欠陥を混入した試験体による実験が進んでおり、おおむね目標値を達成できそうな状況である。 これら材料の実構造物での性能を評価するため、より大きな断面における引張試験を実施する予定であるが、その治具等の設計も終わっており、26年度に予定していた部分はおおむね完了している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに安定的に強度と靭性が発現する調合条件等を検討すると共に、より大断面試験体による一軸引張試験を行い、これらの材料を実際の構造物に適用した場合の性能を適切に評価する手法等を確立する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試験体作製に使用する砂や混和材の使用量が当初想定していた量よりも少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は大型の試験を多数作製する予定なので、その試験体作製に使用する砂や混和材の購入費用に次年度助成金と共に使用する予定。
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