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2015 年度 実施状況報告書

キノン架橋ゼラチンを用いた生体組織用接着剤の開発と耐水接着の原理解明

研究課題

研究課題/領域番号 26820324
研究機関地方独立行政法人大阪市立工業研究所

研究代表者

山内 朝夫  地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究員 (80416304)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード接着タンパク質 / ポリフェノール / 酸化 / キノン / ゼラチン / 耐水接着性
研究実績の概要

本研究では、ポリフェノールを使ってゼラチンを酸化架橋することで耐水接着性を備えたゼラチンを調製する。前年度に耐水接着性を示すポリフェノールとして、ヒドロキノンとカフェ酸を選定した。本年度ではこれらのポリフェノールを用いて、ブタ皮を基材とする接着試験(ATSM規格F2255-05参考)で、接着力を測定した。まず、ポリフェノールと酸化酵素であるチロシナーゼをゼラチンに加え、ブタ皮に挟んで試験片を調製した。室温で24時間放置することで架橋した試験片について引張せん断強度を測定した。その結果、ヒドロキノンで架橋したゼラチンは、未架橋のゼラチン(3.2kPa)と比較して約3倍強力に接着することがわかった(約10kPa)。次に、ヒドロキノンとゼラチンの濃度を変化させることで接着強度の最適化を図ったところ、未架橋のゼラチンに比べて30倍まで接着力を増強することができた(約90kPa)。同様に、カフェ酸で架橋したゼラチンについても100kPa程度まで接着力を高めることができた。さらに、試験片の調製時間を1時間として接着強度を測定したところ、接着力に誤差があるものの、30kPa程度の接着力を保持することがわかった。
一方、架橋ゼラチン接着面の接触角を測定し、表面自由エネルギーを求めた。耐水性を示すヒドロキノンあるいはカフェ酸架橋ゼラチンと、耐水接着性を示さないカテキン架橋ゼラチンに比べたところ、表面自由エネルギーの非極性の分散成分が異なっていた。接着面における非極性の分散成分が高まることで、耐水接着性が誘起することが示唆された。
また、接着試験の対照実験として、耐水接着性を示さないポリフェノールを用いて、ブタ皮を基材とする接着評価を行った。その結果、耐水接着性を示さないポリフェノールでも接着することが判明し、耐水性と接着力の関係を調べる目的の達成には新規評価系が必要であることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画であった「生体組織に対する接着試験」および「耐水接着性の分析」について、いずれも着手しており、未完了の計画はない。しかし、実績の概要に示したとおり、立ち上げた接着評価系が不十分であり、耐水性と接着力の関係を調べるには期間を延長する必要があるため。

今後の研究の推進方策

濡れた臓器等の接着剤の評価としては不十分であり、耐水性と接着力の関係を調べる本目的の達成には、新規評価系が必要である。そこで、ブタ皮の代わりに含水率が高いモモ肉等の組織片を基材とする接着試験を行うことで、耐水接着性の評価を行う。また、接着面の接触角以外の分析を使って架橋が耐水接着性との相関を調べることで、耐水接着性の原理についてさらに追及する。

次年度使用額が生じた理由

架橋点間距離の測定レンジに合う動的粘度弾性装置のオプション「トルクセンサー」(計237 千円)と細胞培養において職務研究から隔離するためにCO2 インキュベータ(計850 千円)を導入する予定であった。「トルクセンサー」について、本架橋は反応性が高いことが判明し、既存の測定レンジでも十分な対応できるため高精度のトルクセンサーの購入を控えた。一方、CO2 インキュベータについては前年度の推進方策の変更により、培養表皮シートを調製する必要がないため、購入計画から削除した。

次年度使用額の使用計画

通年で必要な試薬・溶媒類、ガラス器具類等の必需品と論文投稿費や学会参加費等の他、接着評価ではサンプル調製量が多くなるため、ポリフェノールや酵素等の精製品を補充する。また、架橋度および接着面の分析に必要な分析ステージを購入する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] New aspects of the structure of human hair on the basis of optical microscopic observations of disassembled hair parts2015

    • 著者名/発表者名
      Asao Yamauchi, Kiyoshi Yamacuhi
    • 雑誌名

      Journal of Cosmetic Science

      巻: 66 ページ: 15-29

    • 査読あり
  • [学会発表] ポリフェノールの酸化架橋を利用した生体組織用ゼラチン接着剤2016

    • 著者名/発表者名
      山内朝夫、畠中芳郎
    • 学会等名
      日本農芸化学会2016年度大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-03-30
  • [学会発表] ポリフェノールを用いたタンパク質の酸化架橋に関する研究2016

    • 著者名/発表者名
      山内朝夫
    • 学会等名
      第40回分析機器展
    • 発表場所
      大阪市立工業研究所(大阪市城東区)
    • 年月日
      2016-02-17
  • [学会発表] キノン架橋ゼラチンを用いた生体組織用接着剤2015

    • 著者名/発表者名
      山内朝夫
    • 学会等名
      府市合同発表会
    • 発表場所
      大阪産業創造館(大阪市中央区本町)
    • 年月日
      2015-12-01
  • [学会発表] 桐油と竹酢液を用いた膠油接着剤の開発2015

    • 著者名/発表者名
      山内章、木下雅代、山内朝夫、田中重光、木曽太郎
    • 学会等名
      文化財保存修復学会 第37回大会
    • 発表場所
      京都工芸繊維大学(京都市)
    • 年月日
      2015-06-28
  • [学会発表] 泡消火剤による爆風の圧力軽減効果に関する研究2015

    • 著者名/発表者名
      日吉玲子、田川雅弘、武内将、高塚勇希、遠藤辰基、吉川昭光、木曽太郎、山内朝夫
    • 学会等名
      火薬学会2015年度春季研究発表会
    • 発表場所
      慶応義塾大学日吉キャンパス(横浜市)
    • 年月日
      2015-05-29

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公開日: 2017-01-06  

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