研究課題/領域番号 |
26820328
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
森 昭寿 崇城大学, 工学部, 准教授 (60433017)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポーラス金属 / 爆発加工 / 衝撃粉末固化 |
研究実績の概要 |
本研究は粉末圧搾法を用いたMgポーラス材料の創製である。平成26年度では成形可否条件の領域を推定することを目的に、実験条件、特にスペーサの形状や材質に着目して固化成形できる条件について検証した。初年度は高価なMg粉末ではなく、入手が容易なCu粉末を代用し、Mg切削チップを見立て、2種類の粒径(75μm、180μm)を用いた。 過去の予備実験では、市販プラスチックボールなどの安価な材料をスペーサにして実験したが、良好な固化成形が達成できず、比較的良好な成形が得られた試料でもスペーサ同士が離れて固化したので取り除けない状態であった。 そこで本実験では3Dプリンタを用いて比較的低温で溶融し強度の高いABS樹脂を格子型あるいは剣山型に作成し、それを数段に分割して充填できるようにした。このようにすることで空孔率の調整と充填作業を容易にできるように図った。 実験は二重円管の円筒圧搾法を用い、爆薬には粉状爆薬であるPAVEXを使用した。衝撃圧で金属粉末を固化させる場合、試料金属のビッカース硬さと同程度の圧力が必要であると言われている。この爆薬の爆轟圧は最大で約1GPaと、Cu及びMgの硬さとほぼ同程度の圧力となり、本研究に適していると判断した。また二重円管の外側円管と内側円管の間に水を介在させ、過度に熱的影響を受けないようにした。 この実験の結果、Cu粉末の部分は良好な固化成形を達成できたが、試料粉末の上部或いは下部の一部が散失し、条件によってはスペーサ材料が溶融しその内部にCu粉末が入り込んだような状態が見受けられた。散失した原因は、試料粉末とスペーサを容器内部に充填する際にガスが内部に相当量残留したためだと考えられる。試料容器下部にガス抜き用穴を設けているが、抜けきれずに残ったガスが衝撃負荷時に試料内部で圧縮し、衝撃波通過後圧縮したガスが急速に膨張して試料ごと噴出したと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現状は申請書に記載した計画よりやや遅れている。平成26年度にはMgチップを用いた固化成形実験において実験条件の確認と成形可否条件の推定を図る予定であったが、現状は実験条件の確認ができたというところである。この遅れは、Cu粉末実験において実験装置の見直しが必要になったためである。実績の概要にて述べているように、Cu粉末を用いた実験では試料内部のガスが抜けきれず固化成形が良好に達成できなかった。 通常、衝撃粉末固化成形を行う際、試料粉末を手動プレス機などである程度充填した状態で衝撃波を負荷するので、試料内部に残留するガス量は少なく、良好な成形体を得ることできる。本研究では、試料粉末とスペーサを混在させるので初期充填をしにくく、特に空孔率を上げるために格子幅を小さくした場合ではスペーサ内部まで十分に押し詰められなかったと考えられる。その点を考慮して、スペーサを数段に変更して充填作業の向上を図ったが、試料上部及び下部が散失する結果が多く見られた。試料容器の蓋と試料の間に発生した隙間にガスが多く残留した可能性も推測される。これらの結果から、Mg切削チップを用いる場合、チップサイズと形状が一定ではないため、Cu粉末を用いた場合よりも残留するガス量が多く、良好な固化成形が達成できないと考えられた。そこで当初の計画で考えていなかった、初期充填作業・試料粉末容器の形状・スペーサ形状の見直しと再検討を行う必要性に迫られ、遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
申請時における本研究課題の計画では、平成27年度に試料内部を伝播する衝撃波について数値解析を実施する計画である。現時点では前述したようにMg切削チップを用いた実験が十分ではない。Cu粉末の結果から固化成形自体は可能であると判断される。散失する部分をなくすため、初期充填方法を見直した実験を実施する。充填作業はスペーサと試料粉末とが混在するので、手作業による充填も限界があり、ポンチでプレスしても不均一になる。ワイヤ状のMgをスペーサに巻き付けて充填する方法も検討したが、Mgをワイヤ状に加工することが難しく市販されているものも非常に高価で少量しか手に入らなかった。現在、真空ポンプで吸引しながら充填することができるような装置を製作しており、完成後、Mg切削チップによる成形実験を実施する。 また、実験と同時に当初の計画通りに衝撃波の伝播過程について数値解析を実施する。当初は数値解析を用いて、実験装置の違いや、空気、水などの圧力伝達媒体の違いによる変化など、様々な実験条件について数値解析的に検討する予定であったが、今回の実験によって粉末固化時の残留ガスが固化成形の大きな阻害要因と推察されるので、ガスが残留した際の挙動に着目して数値解析的アプローチを試みる。数値解析を適用する条件を当初の計画より絞り込み、現状の遅れを取り戻す。また、残留ガスの影響に関しては、通常の円筒圧搾では試料内部のガスを無視できるためか、この件に関する既報告が見受けられない。新たな知見を得る可能性もあり興味深い結果が得られると期待できるため、数値解析の適用範囲を当初より絞り込む。 数値解析のみでは現象の真偽を検証できないため、計画に基づき、まずは予備実験を平成27年度に行い、本実験を最終年度の平成28年度に入ってすぐに実施できるように準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入しようとしていたオシロスコープの価格が変動し、アカデミック割引を利用して価格調整を行った。また、実験結果が満足いくものでなかったので、当初の予定にない実験材料を購入し、また予定していた材料を追加購入した。 このように材料の変更・追加購入したため、当初計画していた消耗品を今年度で購入することが難しくなった。そこで、今年度購入計画していたもので次年度購入しても計画に遅れが生じない圧力測定用センサ類を次年度に購入するように計画を変更し、今年度予算を超過しないように購入順序を変更して調整した。購入順序を変更し、また旅費等に計画していた予算も調整して価格の超過を補ったものの、上記金額である14984円の次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に計画していた材料、実験消耗品、アルゴンガスは今年度購入した分である程度補うことができる。そこで、購入を計画したものの計画変更で購入しなかったチャージインテグレータとピエゾフィルムストレスゲージ・電子部品を、平成27年度購入計画していた装置製作費、材料費、爆薬代、実験消耗品の費用で購入するように計画を変更する。
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