本研究は,ダイカストマシンを単なる大量生産手段としてではなく,高圧・高速および強冷却が得られるという特徴を積極的に利用することで,より微細かつ均一な組織を得ることが出来る手法を目指して研究・開発するものである.従来の半凝固ダイカスト法では,通常外部で半凝固スラリーを作成した後ダイカストマシンに投入し,鋳造を行う.一方本研究ではダイカストプロセスにおける高い流速と強冷却を利用し,超微細かつ均一な組織を有するスラリーをダイカスト成型プロセス中に生成することで,余計な装置を不要とし,さらにそれによる頻繁な小トラブルの削減を目指す.従来のダイカスト法と変わらない設備を用い,注湯・射出条件および金型の設計のみで従来の半凝固鋳造と同等以上の性能を可能とする条件の検討を行うことで,高精度・高強度成型を行うための基礎検討を行い,さらなる高強度が見込める展伸材への展開を目指すものである. 初年度は金型内における溶湯の冷却挙動と,その解析手法確立を目指した.その結果,鋳型内にサイクロンを設置して冷却・撹拌制御するためには,最も重要なのは装置の入口および出口の位置であることがわかった.ダイカストの金型にて適切な入口・出口位置を設置するための設計技術確立は困難なため,2年度は入口部分における溶湯制御により,解決を試みた.その結果,ダイカスト時にスリーブ内に溶湯を注湯する際の温度を適切に制御することで,スリーブ内にて半凝固状態を保持できることがわかった.また初晶晶出の余地を適切に残すことで,射出後の金型内での凝固も制御することができ,従来ダイカスト法では実現できなかった超微細初晶組織を得ることができることがわかった.薄肉部の流動性や寸法精度についても従来ダイカスト法と比較し改善可能であることがわかった.展伸材の成型も可能であったが,特性については今後の課題である.
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