研究課題/領域番号 |
26820344
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
久保 優 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00633752)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多孔性配位高分子 / 液滴噴霧 / Metal-Organic Frameworks / 窒素吸着 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、多孔性配位高分子(MOF)のエアロゾル合成プロセスを提案し、液滴径制御を中心とした操作条件の実験的検討により、連続合成に必要な操作因子を見出すことを目的とした研究を行った。本年度の研究成果の概要は以下の通りである。 1.エアロゾル合成プロセスの操作条件を検討するため、バッチプロセスによりHKUST-1と呼ばれるMOFの合成を行い、HKUST-1が合成される条件を検討した。具体的には前駆体濃度や加熱温度、反応時間といった操作因子を変えて、得られた生成物の結晶構造や細孔構造、粒子性状などの物性との関係を調べた。その結果、バッチプロセスでは数時間の反応時間が必要であることが分かった。 2.液滴発生器、加熱部、捕集部によって構成されるエアロゾル合成装置の製作を行った。液滴発生器として幅広い液滴径分布で液滴を噴霧可能な二流体ノズルを用いた。 3.合成装置の操作条件(前駆体濃度、加熱温度、加熱部での滞留時間など)を変化させ、HKUST-1のエアロゾル合成を行った。非常に短い反応時間であるにもかかわらず、X線回折によりHKUST-1が生成されていることがわかり、得られた生成物はHKUST-1ナノ粒子が凝集したサブミクロン粒子であった。ただし、凝集粒子は未反応物も含まれており、純度の低いHKUST-1粒子であった。生成物を洗浄すると、未反応物の除去が可能であり、高い比表面積を示した。操作条件を変化させて合成を行ったが、生成物の物性に顕著な変化は見られず、幅広い操作条件でエアロゾル合成が可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の進捗に関して、実施者が最も懸念していたことは、提案したプロセスの基本的原理の妥当性であった。具体的にはバッチプロセスよりも非常に短い反応時間である本プロセスでMOFのような結晶性の材料が合成されるかを懸念していた。これについて本年度の段階で達成できたことから、進展は順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に、当初の研究計画に沿って遂行することとする。つまり、本プロセスを用いたHKUST-1以外の他種MOFのエアロゾル合成、および単分散液滴発生器を用いた単分散MOFの合成を行う。以上の知見を踏まえ、本プロセスにおけるMOFの結晶生成・成長メカニズムを検討することによって、多様なMOFに展開可能なプロセス条件を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調達方法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたため。また所属研究室のある建物の移転のため、大型装置購入を控えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品として、実験に用いるガス・試薬、および装置の改良や改造に使用する各種材料と配管類を購入する。備品として恒温槽を購入する。また、学会等における研究情報収集・成果発表のために旅費を執行する。以上のほか、生成MOFの物性データを得るための機器使用料・委託測定料、および研究論文発表のための経費を予定している。
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