高シリカケージ型大空間ゼオライトの一つであるCHA型ゼオライトを種結晶添加法により完全な有機テンプレートフリー条件下で合成することを目標とする。過去のゼオライトのテンプレートフリー合成に関する文献を参照しながら、テンプレートを用いて合成したCHA型ゼオライトを種結晶(第一世代)として、テンプレートを含まない反応混合物ゲルに添加した。その後水熱処理を施すことで、CHA型構造を有するゼオライトをテンプレートフリーで合成した(第二世代)。更に、得られた生成物(第二世代)の一部を種結晶としてテンプレートを含まない同組成の反応混合物ゲルに添加し、水熱処理を施した結果、再度CHA型構造を有するゼオライト(第三世代)を結晶化させることに成功した。この結果は、CHA型を完全なテンプレートフリー条件下で繰返し合成できる、低コスト、低環境負荷な“グリーン”合成技術になると期待される。また、第二および第三世代のCHA型は、種結晶と同様にミクロ細孔を有していることを確認した。しかし、種結晶と比較すると第二および第三世代のCHA型の結晶性が低く、ミクロ細孔容積が小さいことがわかった。今後も結晶化メカニズムの解明を含め、合成条件の最適化を行い、高い結晶性と細孔特性を有するCHA型をテンプレートフリーで合成し、CO2等の吸着性能評価を実施する。 本研究に関連して、モデルゼオライトとして結晶性が高いβ型ゼオライトを選択し、これにCO2をプローブ分子として骨格に吸着させて吸着熱を評価した。NMR等の結果と併せて考察した結果、β型の骨格中Alの分布がテンプレートを用いる従来法とテンプレートフリー合成法で異なることを発見した。Alの分布はゼオライトの耐久性、触媒特性、吸着特性等に影響するため、結晶性の高い第二および第三世代のCHA型ゼオライトを合成した後、上記の評価手法を応用して性能評価を実施する。
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