当初計画で予定していた3種の反応系(A)「水素中微量COの選択酸化(PROX反応)」、(B)「アミン酸化によるイミン合成」、(C)「尿素分解による水素製造」のうち(A)と(B)についてはすでに前年度までに目標をクリアしている。28年度は(B)および(C)の2つの系において以下のような進展があった。 (B)の反応の発展として、アルミナ担持Pd系金属間化合物を用いたアルコールによるアミンのN-アルキル化反応を行い、PdZn/Al2O3が本反応に高い触媒活性及び選択性を示すことを見出した。この反応ではアルコールよりアミンの方が活性化されやすく、副反応であるアミンの二量化や水素化分解が進行するため、アミンの基質範囲が活性化を受けにくいアニリンや脂肪族アミン等に限定されてきた。これに対しPdZn/Al2O3を用いた場合では、反応性の高いベンジルアミン類を用いた場合でも高収率で目的のN-アルキル化体が得られる点が特徴である。また、DFT計算を含む詳細な検討から、酸素との親和性の高いZnが表面に存在することによって含酸素化合物であるアルコールの吸着及び活性化が含窒素化合物であるアミンのそれらに対して有利になるため、選択的に反応が進行することを突き止めた。本研究結果は国内外で高く評価され、ACS Catalysis誌のフロントカバーに選定された。 (C)尿素分解における後段の反応であるアンモニア分解において、Al2O3上に金属RuとLa2O3を含侵担持したバイメタリック触媒を調製し、RuとLa2O3の混合比を最適化することで、高性能なアンモニア分解触媒を得ることに成功した。
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