研究課題
本申請課題では、規則性構造でかつ膨潤性や調節可能な物理的・化学的特性を有する層状無機化合物をナノ空間として利用した複核金属中心の精密設計手法を確立し、分子状酸素による位置選択的な酸化的脱水素型カップリング反応を進行させる固体触媒を開発することを目的とした。平成26年度は、層状ケイ酸塩であるマガディアイトのシリル基が上下に規則的に配列したナノ層間の構造に着目し、その層間へ銅単核錯体をカチオン交換で固定化することにより一段階で二核銅中心が形成されることを明らかにした。また、このマガディアイト固定化二核銅触媒は、有機溶媒中で膨潤し、酵素チロシナーゼが進行させるジメチルフェノールの位置選択的な酸化的カップリング反応を、酵素よりも10倍以上高い触媒回転数で進行させることを見出した。マガディアイトのナノ層間が二核銅中心の調製場として機能するだけではなく、層間内にて反応中も二核構造を効果的に安定化している為、高い活性、選択性、及び耐久性を有する優れた触媒として機能していることを種々の分光学的解析により明らかにした。平成27年度は、平成26年度で実施したマガディアイトのナノ層間を構造制御場とする固定化二核銅錯体触媒の開発の知見に基づき、マガディアイト固定化二核錯体触媒がアジド―アルキン環化付加反応を含む、種々の結合形成反応に対して高活性を示すことを見出した。さらに、マガディアイトにルテニウム種を固定化することで、フェノール類の位置選択的な酸化的カップリング反応及びカップリング生成物の水素化反応をワンポットで進行させる多機能固定化複核金属触媒の開発へと展開した。また、層状粘土化合物のナノ層間がポリマー分子を効率的に活性化できる反応場となる知見を得ることができ、固体触媒のナノ空間を利用したポリマー解重合反応を開拓することに成功した。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (36件) (うち国際学会 13件、 招待講演 1件)
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