研究課題/領域番号 |
26820353
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
三浦 大樹 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (20633267)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 担持金属触媒 / ルテニウム / 有機合成反応 |
研究実績の概要 |
高性能触媒を用いた有用化成品や機能性材料の合成は我々の生活を根幹から支える基幹技術であり、それらの更なる革新は重要な課題である。これまでに申請者らは酸化物担体上に単核Ru=O種が高分散した触媒が、様々な高度有機分子変換反応に優れた活性と高い環境調和性能を示すことを見出し、報告してきた。本研究では、これら単核Ru=O種の固体酸化物上での生成機構を明らかにするとともに、それらの生成を可能とする新規酸化物担体を開発し、様々な担持金属の固体酸化物担体上における一原子レベルでの構造制御法の確立を行なった。これらの検討結果をもとに、酸化物系固体触媒の有機合成用触媒としての高機能化や、機能性材料骨格構築を指向した新規C-C結合生成反応など種々の高度分子変換反応に有効な酸化物系固体触媒ライブラリーの構築を目指した。本年度は、芳香族カルボン酸の内部アルキンへの付加反応を種々の担持Ru触媒を用いて検討した結果、酸化ジルコニウムに担持したRu触媒が優れた触媒活性を示し、抗菌作用、抗HIV作用、抗酸化作用など示す生理活性物質に含まれることが知られているフタリド誘導体が高い収率で得られることを見出した。フタリド誘導体合成に関してはこれまでに錯体触媒を用いた例が報告されているが、いずれも化学量論量の酸化剤を必要としていた。一方、本研究で申請者らが開発した触媒系は、Ru触媒のほかに触媒量の無機塩基のみを添加するだけでよい。本触媒は様々な芳香族カルボン酸および内部アルキンに適用可能であり、対応するフタリド誘導体がそれぞれ良好な収率で得られた。さらに触媒の回収・再利用が容易に行なえることから高い環境調和性能を併せ持つことが示された。本研究成果はChemical Communication誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は担持Ru触媒の有機合成反応に対する新規な触媒作用の探索を中心に検討を行なった。なかでも芳香族カルボン酸の内部アルキンへの付加反応は、触媒の選択、反応条件の最適化が順調に進み、当初の計画よりも早く学術論文への発表に至った。さらに新規な触媒反応の開発にも着手し、一定の成果が得られるなど当初の計画以上に研究が進行しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続き担持Ru触媒の新たな触媒作用の開発を遂行する。とくに芳香族カルボン酸を用いた触媒反応に有効性を見出したことから、芳香族アミドや芳香族イミンなど種々の反応基質との組み合わせを精査し、新規な触媒反応の開発を目指す。また、これまでRuに特化した触媒探索を行なってきたが、他の遷移金属を単核状で担体上に構築可能な手法の確立を目指す。これにより種々の遷移金属を担持した触媒を用いた環境調和型有機分子変換反応の開発も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度計画した新規合成反応の開発検討において、当初の計画よりも順調に反応条件の最適化などの検討が進んだため、年度初めに予定した消耗品等の物品費の消費が少なくなったことが主な原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はさらなる新規反応の開発を進めるため、今年度余剰となった物品費を次年度の消耗品の購入等に充当する。また、得られた成果を国内外の学会で報告する為、旅費等への充当もする。
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