高性能触媒を用いた有用化成品や機能性材料の合成は我々の生活を根幹から支える基幹技術であり、それらの更なる革新は重要な課題である。これまでに申請者らは酸化物担体上に単核Ru=O種が高分散した触媒が、様々な高度有機分子変換反応に優れた活性と高い環境調和性能を示すことを見出し、報告してきた。本研究では、これら単核Ru=O種の固体酸化物上での生成機構を明らかにするとともに、それらの生成を可能とする新規酸化物担体を開発し、様々な担持金属の固体酸化物担体上における一原子レベルでの構造制御法の確立を行なった。これらの検討結果をもとに、酸化物系固体触媒の有機合成用触媒としての高機能化や、機能性材料骨格構築を指向した新規C-C結合生成反応など種々の高度分子変換反応に有効な酸化物系固体触媒ライブラリーの構築を目指した。本年度は、アルデヒド、アルキン、一酸化炭素の[2+2+1]付加環化反応を種々の担持Ru触媒を用いて検討した結果、酸化セリウムに担持したRu触媒が優れた触媒活性を示し、抗菌作用、抗HIV作用、抗酸化作用など示す生理活性物質に含まれることが知られているγ-ヒドロキシブテノリド誘導体が高い収率で得られることを見出した。酸化セリウム担持ルテニウム触媒を用いた場合に種々のアルキンやアルデヒドが適用可能で、対応する生成物が良好な収率で得られた。反応に使用後の触媒は容易に回収・再生利用することが可能で、高い環境調和性能を有することも明らかにした。本研究成果はAngewandte chemie誌に発表された。
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