研究課題/領域番号 |
26820355
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研究機関 | 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー |
研究代表者 |
安藤 伸治 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー, 高効率次世代燃料電池プロジェクト, 常勤研究員 (10525348)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プロトン伝導体 / ナノ相分離構造 / 自己集合 / 水素結合 / ヘテロ原子間相互作用 / 直交構造 / 平面構造 / 燃料電池 |
研究実績の概要 |
本研究では、分子の立体構造と分子間相互作用を協奏的に利用した設計戦略の基づき、親水性および疎水性ユニットの集積構造を巧みに制御し、高効率な化学―電気エネルギー変換を実現するプロトン伝導性材料の創製を目指している。その一環として、初年度に開発した疎水性ベンゾチアジアゾール(BT)骨格を有する一連の含ヘテロ芳香族系高分子群の最適化を行った。その結果、最適な含有率に調整したプロトン伝導性高分子は、強い分子間相互作用に起因して、高い膨潤抑制能を有し、明瞭なナノ相分離構造を形成して成膜化することを見出した。さらにFT-IR測定結果より、成膜した電解質膜は、プロトン伝導部位であるスルホン酸基が高密度に集積されることが分かった。このような構造化に起因して、BT骨格を基盤とした電解質膜は、幅広い湿度領域に渡って良好なプロトン伝導性を示し、低い活性化エネルギーによって、プロトン輸送が進行していることが明らかになった。また上記の研究に関連して、急角度に捻れた直交構造と水素結合を協同的に利用したデザイン戦略を基に、簡便な合成手法を用いて、特異な自己集合挙動を示す新たな有機フレームワーク(疎水部)の構築にも成功した。この分子は、従来の多孔質材料とは異なり、様々な機能性ゲスト分子を、そのサイズや形状に応じて、均質かつ高密度にナノ集積化することを見出した。とりわけ、この有機フレームワークとプロトンキャリアであるイミダゾールゲスト分子(親水部)との自己集合は、耐水性・耐熱性を有する一次元状の無加湿高温型プロトン伝導チャンネルを形成し、そのプロトン移動サイトが極端に近接化することが分かった。この特異なチャンネル構造の発現に起因して、ナノ空間内のプロトン輸送は、低い活性化エネルギーによって、高速で進行することを明らかにし、異なる機能が自発的にナノ相分離するための構造モチーフと新たな自己集合化手法を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初の目的であった含ヘテロ芳香族系電解質膜の開発は順調に進んでおり、幅広い湿度および温度領域に渡り、良好なプロトン伝導性が達成されている。とりわけ、低湿度高温領域での伝導性向上は、大きな進展である。また自発的に親水性ユニット(プロトン伝導部位)と疎水性ユニット(フレームワーク)がナノ相分離するための構造モチーフや新たな自己集合化手法の開拓にも成功している。よって、研究の進捗度は良好であり、さらに開発したコンポーネントを最適化することにより、高効率な化学―電気エネルギー変換を実現する新規プロトン伝導体・電解質膜の創製が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発した含ヘテロ芳香族系高分子材料の親水性ユニット(プロトン伝導部位)および疎水性ユニット(膨潤抑制部位)を最適化し、幅広い湿度・温度領域に渡るプロトン輸送特性の向上を図る。また構築した電解質膜のプロトン伝導度は、これまでと同様に、交流インピーダンス法を用いて評価し、これら電解質膜を用いた固体高分子形燃料電池を作成して、発電性能試験を行う。また新たに開発した疎水性有機フレームワークの均質かつ高密度な自己集合法においては、新たなプロトン伝導性ゲスト分子の集積化を検討し、高速プロトン輸送を実現するための伝導チャンネル構造を探索する。さらに上記で得られた結果は、随時分子設計指針にフィードバックし、コンポーネント分子の最適化を施しながら特性向上を目指す。
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