研究課題/領域番号 |
26820357
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
前田 義昌 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30711155)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 微細藻類 / バイオ燃料 / リパーゼ / 遺伝子組み換え / 組み換えタンパク質 / オレオソーム |
研究実績の概要 |
脂質高生産珪藻Fistulivera solari内に蓄積された油滴状の脂質を分解し、遊離脂肪酸として細胞外に放出することを目指し、遺伝子組み換え技術を用いてリパーゼの過剰発現を試みた。油滴上に局在すると予想される当該株由来のリパーゼ遺伝子を恒常的に発現するベクターを構築し、マイクロパーティクルボンバードメント法により導入した。その結果、形質転換対は獲得できたものの、そのゲノムに挿入されたリパーゼ遺伝子は触媒部位をコードする領域が欠如していた。そのため、リパーゼを恒常的に発現することにより、細胞毒性が生じる可能性が示唆された。そこで、当初計画した通り、当該株のトランスクリプトーム解析で得られた情報を基に、細胞が定常期に達し、脂質の蓄積が完了した後にのみに発現する遺伝子(硝酸塩代謝関連遺伝子、トランスポーター遺伝子など)のプロモーターを用いた発現制御システムの構築に取り組んだ。上記のプロモーターの下流に緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝誌を配置した、発現制御ベクターを複数構築するに至っている。それらを当該株に導入し、既に形質転換体の獲得に成功しており、現在、発現挙動解析を実施している。さらに当初、油滴に局在すると予想されるリパーゼとは別に、トランスクリプトーム解析の結果、脂質分解時に強く発現するリパーゼ遺伝子を複数特定した。これらのリパーゼも油滴に局在し、脂質の分解に寄与する可能性が高いと考えられるため、今後の局在解析の対象に加える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子発現制御システムの構築と脂質を分解するリパーゼの細胞内局在解析のための基礎的な解析と形質転換体の作出を完了することができた。これにより来年度は、脂質高生産珪藻の細胞内で毒性を示すリパーゼを、効果的に発現させるためのプラットホーム構築を推進することが可能となった。以上の成果が得られたことより、本研究は概ね順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度中に作出した遺伝子発現制御システムの構築のための形質転換体を培養し、GFPをレポーターとして、発現制御パターンの詳細な解析を進める。また、トランスクリプトーム情報から選出した、脂質を分解するリパーゼの細胞内局在解析では、細胞内毒性を低減するために、触媒活性部位に人為的に変異を導入し、発現を容易にする手法を新たに試みる。以上のアプローチにより、本研究に必要な発現制御システムの開発、油滴局在リパーゼの同定を行い、両者を組み合わせることで、珪藻細胞内の脂質の分解を試みる予定である。
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