研究課題/領域番号 |
26820359
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
綾戸 勇輔 信州大学, 繊維学部, 助教(特定雇用) (70415769)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 赤血球 / ヘモグロビン / 酸化インジウムスズ / 直接電子移動 / 酸素還元反応 / バイオ燃料電池 |
研究実績の概要 |
赤血球のITO電極上での直接電子移動(DET)とO2還元能を利用したシンプルなバイオ燃料電池カソード開発の為に、ディップコート法を用いて平板ガラスにITO前駆体を堆積させ、電気炉で焼成することでITO電極を作製した。焼成温度を検討した結果、大気雰囲気下500℃で予熱した電気炉内で15分程度焼成し、ディップコートを繰り返した結果、回数ごとにITOの抵抗が減少し、約8回以上繰り返した後、抵抗がほぼ一定となったため、ディップコート回数は10回とした。In:Snの組成比をこれまでの19:1だけでなく、9:1, 4:1, 1:1, 1:4になるように調製したディップコート液を準備し、上記条件で焼成したITO電極も作製した。作製したITOはSEMやXRD測定等を行ったところ厚さ300nmでSnがドープしたIn2O3(すなわちITO)薄膜が作製できており、電極抵抗は組成比によって異なることが分かった。 作製したITO電極上でのヘモグロビン(Hb)のDETを検討したところ、19:1の組成比ではこれまで同様単分子層吸着量に近い反応電流が計測され、本課題の作製法でもHbはDET活性を示すことが明らかとなった。顕著な結果として、ITOの抵抗は4:1が最も低かったにも拘らず、9:1や4:1では19:1とほぼ同じ反応電流が計測され、1:1の時にそれらの25倍近い反応電流値が得られた。また、1:4ではIn2O3の結晶層がほぼ消失し、ITOの抵抗が大きく、HbのDET電流は観測されなかった。これらより、従来電極表面に吸着したHbがITOと反応していたと考えていたが、少なくとも単分子層以上の堆積層中などでHb同士での電子の授受が行われ、1:1では25層弱分の電流が流れたと考えられる。これはSnなど、電子移動反応活性点の存在も示唆しているが、今後調査していきたい。 また、HbはO2還元能を示し、1:1で最も大きいO2還元電流が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ITOの作製法の最適法が完全に確立されたわけではないが、当初平成27年度に計画していた実施内容の一部についても検討が行え、InとSnの組成比を検討したところ、1:1で従来の25倍近くHbの反応量を増加させることに成功した。 また、HbにO2還元能があることも証明した。
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今後の研究の推進方策 |
赤血球中のHbでもDET活性を示すのか同様の試験を行うとともに、O2還元能を評価する。 また、今回最も性能が良かった1:1の電極を用いて、バイオ燃料電池単セルを組み立て、電池発電試験を行う。 InとSnの組成比について、より細かく組成比を振ることで、HbのITO電極上での電子移動の振る舞いについてより詳しく解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬、器具、装置等物品や旅費に関して、当初予定実施計画より安く、計画通り研究を遂行することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初研究実施計画を遂行するにあたり、次年度使用額と平成27年度分を合わせて、さらに詳細な電極上で発現するHbの電子移動反応の解明を進め、さらなる電極性能向上を加速するための研究環境体制(高額試薬消耗品物品等の購入や情報収集等)充実のために使用する。
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