赤血球中のヘモグロビンのITO電極上での直接電子移動(DET)とO2還元能を利用したシンプルなバイオ燃料電池カソード開発の為に、ディップコート法を用い、平板ガラスにITO前駆体を堆積させ、電気炉で焼成することでITO電極を作製してきた。前年度までにITOの焼成方法についてIn:Snの組成比(モル比)を10%刻みでSn量を増加させITOを作製したが、ディップコート液のIn:Snが50%の時にヘモグロビンは最も大きいDET反応活性を示し、O2還元能ももっとも大きかった。 本年度は、Snの組成比を50%に固定して、ITOの焼成温度を350℃、500℃(従来温度)、650℃、800℃、950℃に振り分け作製を試みた。 その結果、350℃の焼成温度ではITOに帰属されるピークはXRD回折パターンにまったく現れず、まだ結晶化度が低いアモルファス構造をとっていると予測され、電気化学測定についても測定が行えなかった。今回は、ガラスではなく高温焼成に耐えうる石英ガラスを選択したが、500℃でヘモグロビンは反応したが、ガラス基板に比べ反応量は少なかった。石英基板では、650℃が最も反応量が多く、91pm/cm2であったがガラス基板500℃では222pm/cm2であったので下地素材や表面状態によってもITOの結晶構造に影響があることが示唆された。850℃まで焼成したITO上ではヘモグロビンは直接電子移動活性を示したが、950℃処理後のものではほとんど反応せず、電気化学データからITOの抵抗成分が観測された。またXRD回折パターンのピークシフトも観察され、In4Sn3O12やSnO2などの結晶化度や結晶構造が変化していると考えられる。また、酸素還元能も500-850℃処理で観察可能であったが、650℃が最も反応量が多かった。 これらの検討より、ヘモグロビンが電極上で直接電子移動活性を示すのは電極材料の組成や結晶構造が大きな影響を与えているということが解明された。
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