モノクローナル抗体は治療薬や検査薬などとして実用化され、盛んに研究開発されている。本研究では、異なるエピトープを認識する複数のモノクローナル抗体(scFv)を、DNA結合タンパク質を足場としてDNA上に標識することにより、新たなセンサー分子(抗体とDNAのハイブリッド:Hybribodyと名付けた)を創成することを目的とした。 モデル抗体として、抗リゾチームscFvにDNA結合タンパク質(p15)を融合し、初年度に確立した大腸菌による大量生産方法により生産し、細胞破砕液から当該融合タンパク質を精製することに成功した。精製タンパク質は、抗原であるリゾチームに対する結合能と、DNAの特定配列に対する結合能の両方の性能を保持していることをELISA法により確認した。 続いて、精製タンパク質およびPCRにて増幅した3種類のDNA断片を用い、抗体融合タンパク質が目的のDNA配列に結合することを確認した。これらの混合比を検討し、Hybrbody形成のための最適条件を検討した。さらに、2か所の結合配列を有するDNA断片を用いた場合は、DNA:タンパク質が1:2の割合で結合することを確認した。 以上の結果から、ポリクローナル抗体の複数エピトープ認識性および高いアビディティと、モノクローナル抗体の分子同一性とを兼ね備えた、DNA-DNA結合蛋白質-抗体(scFv)の複合体(Hybribody)の形成が可能であることが示された。
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