研究課題/領域番号 |
26820362
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石井 純 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環, 准教授 (40512546)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 発現スイッチ / ゲノム編集 / Gタンパク質共役型受容体 / レポーター遺伝子 / 酵母 |
研究実績の概要 |
Gタンパク質シグナルに応答するスイッチングゲノム編集技術として、Cre/loxP組換えシステムを利用して、「遺伝子が抜け落ちて代わりに別の遺伝子が発現する」系を確立した。具体的なレポーターとして、TDH3プロモーターの下流に、両端にloxP配列を付加した赤色蛍光タンパク質E2-Crimsonをコードする遺伝子を挿入し、さらに下流側に緑色蛍光タンパク質ZsGreenをコードする遺伝子を挿入することで、Creリコンビナーゼが作用した場合に、赤色蛍光が失われて代わりに緑色蛍光を発する酵母を作出した。さらに、lexAオペレーターの下流にCre遺伝子を挿入し、LexA-VP16人工転写因子の作用に応答してCreリコンビナーゼを発現するよう改変した。この酵母を用いて、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の二量体形成を検出できるか確認を行った。まず、酵母内在性のGPCRであるSte2もしくはコントロールタンパク質をユビキチン分割体(NubGおよびCub-LexA-VP16)を融合した形で発現させたところ、ユビキチン分割体にそれぞれSte2を融合した組み合わせのみ、赤色蛍光が消失して緑色蛍光が発生した。このことから、Ste2の二量体化に応答してLexA-VP16人工転写因子が切断されて核内に移行することでCreが発現し、loxP配列に挟まれたE2-Crimson遺伝子が脱落してZsGreen遺伝子の発現が誘導されたことが示唆された。さらに、ヒト由来セロトニン受容体(HTR1A)をSte2の代わりに用いたところ、同様にユビキチン分割体をHTR1Aにそれぞれ融合した組み合わせのみ、赤色蛍光が消失し緑色蛍光が発生した。これらのことから、GPCRの二量体化に応答してE2-Crimson遺伝子が抜け落ちて代わりにZsGreen遺伝子が発現するスイッチングゲノム編集技術の確立に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スイッチングゲノム編集技術としてCre/loxP組換えシステムを利用し、「遺伝子が抜け落ちて代わりに別の遺伝子が発現する」系の確立に成功した。具体的には、赤色蛍光タンパク質E2-Crimsonと緑色蛍光タンパク質ZsGreenを利用し、E2-Crimson遺伝子の両端にloxP配列を付加し、その下流側にZsGreen遺伝子配置することで、Creリコンビナーゼが発現した際に組換えが起こり、赤色蛍光が消失して代わりに緑色蛍光を発する酵母の作出に成功した。またLexA-VP16人工転写因子およびlexAオペレーターを利用することで、タンパク質間相互作用に応答してCreリコンビナーゼを発現してゲノムスイッチングが起こるシステムの開発に成功した。このシステムを用いて、Ste2やHTR1AなどのGPCRの二量体形成に反応してE2-CrimsonとZsGreenの発現スイッチが起こることも確認し、GPCRニ量体化の検出に応用できることも示した。これらのことから、研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
Creリコンビナーゼを利用したスイッチングゲノム編集システムをより効果的に行えるようにするため、Creの変異体などを利用した編集効率の効率を図るとともに、ZsGreenやE2-Crimson以外のレポーター遺伝子についても発現スイッチの応用を試みる。たとえば、本ゲノム編集技術のさらなる応用例として、シグナル伝達もしくは二量体形成に応答して自殺プログラムを実行する「スーサイド細胞」もしくは凝集能力を発現する「アグリゲーション細胞」を作出する。「アグリゲーション細胞」においては、過剰発現すると凝集性を示す遺伝子(FLO遺伝子など)を選定し、シグナルに応答して凝集性遺伝子が発現するようゲノム編集パターンをプログラムした細胞を設計する。設計した細胞をGPCR二量体形成などに応答してそれぞれ機能を発現するかどうかを評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
直接経費の支出において、端数の金額が生じた(92円)。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の直接経費(物品費)として使用予定である。
|